黒犬と黒姫


□黒犬の憂鬱
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ジェームズに問いただされてから一週間。
つまり、弥守紫苑がホグワーツに来てから一週間がたった。
一週間の間、弥守を見ていて思った。


「あいつ、モテすぎだろ…」


編入してから今日までの間に俺が知る限り、少なくとも20人以上の男があいつに告白ーーフラれている。
当然その中に俺は入ってない。
と言うか、告白事態まだしてない。
今まであいつに告白した男のタイプは色気様々で、あいつの好きなタイプが全く分からねぇ。
そんな俺の前に、突然あいつは現れた。


「あんまり悩むと禿げるよ?」


「!!!」


「どうしたの?」


驚いている俺を不思議そうにしている弥守に、思わずツッコミを入れそうになったが、なんとか抑える。


「急に現れるな…驚くだろ」


「ああ、ゴメン」


申し訳なさそうに笑う弥守に、自然と頬が緩む。
気づいた時には既に遅く、驚いた様な顔をした弥守がいた。完璧に見られた…。
笑った顔ーー基緩んだ顔を見られ終わったと思ったが、弥守は俺の予想を良い意味で裏切ってくれた。


「なんだ…笑えたんだ」


「は?俺だって笑う時ぐらいーー」


「ポッター達といる時はね。
私がいる時は笑わないから、嫌われてるのかと思ってた」


「別に嫌ってねえよ」


嫌ってない!寧ろその逆だ!


「そっか、なら良かった…」


そう言って嬉しそうに笑う弥守に、俺は益々溺れていく。


どうすれば弥守は俺を見てくれるだろうか?
どうすれば弥守は俺を好きになってくれるだろうーー好きになればなるほど、あいつの事が欲しくなる。


「なあ…どうやったらお前は手に入る?」


声に出していた事に気づいてハッとする。


「えっ?なに?何か言った?」


「いや、なんでもない」


聞こえてなかった様子の弥守に、安心して胸を撫で下ろす。
その一方で、聞こえていたらと思う自分がいる。


「厄介だな…」


誰も居なくなった談話室に、そうポツリと呟かれたシリウスの声は、誰に聞かれる事なく消えていった。




 

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