イナズマ青春記
□第36話 次は世界で
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リカに拉致されたかなを見送り、ソファーで寝ている4人にブランケットをかけて、財布片手にあたしは家を出た。
なんせ食べ盛りな男子が泊まっているんだから、米の消費が早い早い。ただでさえ、あたしもゆみもかなも食べる方だってのに。
あとは牛乳にキャベツ、白菜、鶏肉、醤油、味噌、ヨーグルト……チラシによると、確かアイスも安かった筈だ。
アイスというと、どこぞの袖を捲り上げた厨二病患者を思い出す。やたら目をつけられてたけど、彼は元気だろうか。
そんなことを考えながら商店街へ歩を進めていると、前方から見覚えのある3人が歩いてきた。
「お、ジ・アース組一行だ」
「え?」
「いや必殺技的な意味で」
言わずもがな、円堂に士郎に豪炎寺だ。円堂と鉄塔広場に行くと士郎は言ってたけど、そこで豪炎寺と一緒になったようだ。
「買い出しか?」
「まあね。……あ、そうだ。買う物多いし、暇だったら荷物持ち頼んでいい?色々買いたくて」
「いいぞ!重いものを持つのも、腕の力をつける特訓になるからな!」
というわけで、彼らに荷物持ちを頼んだのだが、
「……士郎、無理しないでね」
「……これくらい平気だよ、りなちゃん」
「腕めっちゃぷるぷるしてますけど」
ひきつったぎこちない笑みを向けられても、なんとも言えない。ちなみに士郎が持っているのは、米10kgである。
円堂と豪炎寺は牛乳を5本ずつと、アイスや野菜系。そしてあたしは調味料や肉だ。士郎が見栄を張りたいのは分かるけど、無理はしないで欲しい。
「あー……うん、やっぱそれあたしが持つよ。士郎は代わりにこれね」
「でも、」
「それこそこれくらい平気だから、ね?」
米を取り上げてあたしが持っていたのを押し付けると、士郎は不満げに渋々といった様子で頷いた。そんなにかっこつけたかったのか。
軽々と米の袋を肩にかけたあたしを見て、円堂は「凄いな!」と言った。豪炎寺は「……本当に女か」と言った。おい豪炎寺、ふざけんなよ。
「あのねぇ、ドリンクの入った籠とか結構重いんだよ?だから秋ちゃんたちも結構力あるだろうし」
「……そうか」
「何そのお前程じゃないだろう的な目は。あたしよりゆみやかなのが凄いからね?」
あ、でも真・帝国での花咲ゆみKOG横抱き事件(今適当に命名)の時、豪炎寺いなかったのか。離脱してて。
そういえばゆみは、とあの事思い出したのか何かを言いかけた円堂の口を慌てて塞ぐ。言うのはやめよう。可哀想だから。
「いつか僕もりなちゃんのことお姫様だっこするね」
「なんの宣言だ」
呆れていると、携帯のバイブ音が聞こえた。メールが届いたらしく、差出人は秋ちゃんだ。どうやらうちに着いたらしい。
「急ぐか」
「え?……あ、そういえばそうだったね」
「何かあったのか?」
「今日の夕飯、秋ちゃんたち呼んでるんだ。みんなで食べようって」
「え!俺そんなの聞いてないぞ!」
「俺もだ」
「いやー明日には地方組が帰るから、ちょっと豪勢にしようって提案したら、かながせっかくだしマネージャーズ呼ぼうって」
「言い出しっぺはかなちゃんだから、りなちゃんは悪くないよ」
「隣なのに何で呼んでくれないんだよー」
「大方、かなの性格からだろうな」
「不服そうだね、豪炎寺くん。敵は多そうだよ?」
「士郎、話拗れるからやめて」
「成る程、今日春奈が俺の誘いを断ったのは、こういうことか」
「どこから湧いたんだ鬼道」
曰く、春奈ちゃんに2人で夕食を食べないかという誘いを断られたから、うちに行こうとしていたとのこと。何故うちに来る。
そんで5人で歩いていたら、風丸にも出会った。待って、似たような展開前にもあったぞ。ゆみとかなバージョンで。
「何このエンカウント率」
「? 大勢の方が楽しいだろ?」
「頼むからその携帯仕舞って。これ以上増やさないで」
「なんか……すまん」
「風丸が謝る必要はないよ」
なんというか、自然と集まってしまうのだろう、このメンバーは。見えない何かで繋がっているというか、引き寄せられるというか。
だからだろうか。近いうちに、同じユニフォームを着て、また一緒にフィールドを走ることが出来るような気がするのは。
いや士郎以外はみんな雷門なんだけれども。そうじゃなくて、なんか、こう、……なんて言うんだろうなあ。
まあもしそんな機会があるのならば、今度は敵だった人とも、仲間として1つのボールを追いかけたいものだ。
……いや、きっとまた、みんなでサッカーが出来る筈だ。サッカーを続けてさえいればまた会えるって、円堂が言ってたんだから。
なんてことを考えながらうちのドアを開けたら、何やら焦った様子で飛び出してきたかなと正面衝突した。危ないなおい。
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