イナズマ青春記
□第36話 次は世界で
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「なあなあ、かなは誰が好きなん?」
「はあ!?」
自室にて。死んだ目の塔子を引き連れて乗り込んで来たリカが、開口一番そう言い出した。え?何?何なの?
「帰るのは明日。なら聞くのは今日しかあらへんやんか!」
「おやすみなさい」
「逃げるな!ていうか逃がすか!」
「ギャー!オフトゥン返してー!塔子ヘルプ!」
「ごめん」
「えっ」
あっさりと見捨てられた。まさかの即答。助けて下さい塔子様!
「さーて、ウチを誤魔化せる思たら大間違いやで!」
「ひえええ!」
くそ、合宿で女子メンバーの方に行かなかった理由バレてた!あれで誤魔化せたとも思ってはいなかったけれども!
「で、豪炎寺とアフロディ、どっちなんや」
「いや別に恋愛感情とかはないよ?」
何故豪炎寺とアフロディが出てきたのか、そもそも何であたしに関する話でこの2人をチョイスしたのかが分からん。
2人共、あたしにとって大切な"仲間"であって、"恋愛対象"ではない。まだそういうのに興味ないってのもあるけど。理由ベタだな。
つかこの体が馴染んじゃったからすっかり忘れてたけど、あたし高2だから年下じゃん。年下……はなあ……。うーん、難しい。
「……ま、ベタな理由だけど今のところ恋愛する気はないし、だとしても年下は対象外ってことで」
「は、え、年下って、かな何歳なんだ!?」
「高2。縮んでるんだけど、言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ!」
「あー、そりゃすまん」
「ほんまかいな……」
「ほんまだよー。あ、敬語とかは無しね。元々気にしてなかったし、今更だから」
トリップした時からあたしもりなもゆみも、中2としてやってきたんだから、普通に同い年として接して欲しい。
今までタメ口だったのにいきなり敬語になるとか、壁が出来て他人行儀みたいになりそうでなんかやだ。
「不憫過ぎるわ……」
「よく分かんないけど、春奈とかも言ってたよな」
「え、春奈ちゃん何か言ってたの?」
「色々話して盛り上がったんねんけど、りなとゆみとかなの話もしたんや」
「うわあ、行かなくて正解……」
一度に5人を相手にするとか無理だわ。秋ちゃんはともかく、夏未ちゃんがノってくるのは意外だとは思うけど。
さて、どうやってこの話題を逸らそうかなー。うん、申し訳ないけど向きを変えさせていただこう。情報収集も兼ねて。
「じゃあさあ、りなとゆみに関してで何話したの?」
「りなとゆみ?せやなあ……」
「かな、お前」
「シャラップ!塔子!」
理想(自分に恋愛の話を向けられない状況を作ること)を実現する(作る)には、犠牲(姉)が必要な時もあるのさ。なーんちゃって!
元ネタ分かった方はあたしとズッ友!え?誰得でもない?ははははは。……ただズッ友って言ってみたかっただけなのだよ。
それに、りなとゆみを引き合いに出したのには、もう1つ理由がある。第三者から見て、誰に好意を持たれてるかを知りたかったからだ。
「間違いなく、吹雪はりなのこと好きやろ」
「だよね。寧ろあんだけべったりで好きじゃなかったらね」
「あと……グランとガゼルがりなのこと気にしとったな」
「ほほう、それは知らなかったな。ご協力感謝!」
「かな……」
呆れたような視線を向けられたけど気にしない!あと誰だろう。そういや佐久間と仲良かったな。こっちも調べとこう。
そうか、凍てつく闇(笑)のカゼルとグランことヒロトか。面倒な奴に意識されおって。
「風丸は?」
「あー、風丸はちゃうわな。それっぽいけど、恋愛感情はあらへん」
「そう?」
「この恋愛プロフェッショナルリカの目に狂いはないで!」
「へえ、そっか」
なら少し追及し過ぎただろうか。まあ風丸は優しいし、大丈夫か。念には念をってことで。
それにしても、恋愛プロフェッショナルっすか。怖いな。
「ゆみは?」
「立向居やな」
「だよな」
分かりやすいし。立向居の場合ゆみが甘やかしまくってる訳だけど、立向居自身が自分の感情に気づいてないんだよね。
「まあそこらへんやな。……で、」
「で?」
「根掘り葉掘り聞かせてもらうで、かな!」
「げっ……逃っげろー!」
「待てえ!」
「……はあ」
部屋を飛び出す時、塔子のため息が聞こえた。根掘り葉掘り聞かれても、話せることなんてないし。
特に……ないな、うん。ないよ。多分ない。絶対にない。
と思いたい。
リビングを覗くととゆみ、木暮、立向居、綱海が一緒に寝てて癒されたので、1枚写真を撮ってから玄関へと逃走した。が、
「……何やってんの?」
出掛けてたらしいりなが、丁度円堂、吹雪、豪炎寺、鬼道、風丸を引き連れて帰ってきたので、逃走は失敗に終わった。あ、オワタ。
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