イナズマ青春記

□第34話 平和な日
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口をぽかんと開けて唖然としているかなを見て、思わず苦笑。そりゃそうだよね。



「あたしも……本当はずっと謝りたかったんだ。ごめんなさい」

「え、え?ちょ、意味分かんないんですけど!」

「最初から分かってた。サッカーは悪くないって。でも兄さんが死んだなんて、どうしても受け入れられなくて……サッカーを嫌うことで現実から目を背けた」

「……」

「サッカーを大好きって気持ちを押し込めて、沢山かなを傷つけて、喧嘩して……。かなは謝ったのに素直を謝れなかった自分が嫌だった。

サッカーは悪くないんだって思ってたけど、やっぱりどこか敬遠してた。正直、吹雪に誘われたり、円堂にああ言われた時、やりたくないって一瞬思った。

そんな自分が嫌になって、過去の自分と決別したくて、またボールを蹴ろうと思った」

「……なーんだ。自分が嫌になってたのは、お互いに同じだったんじゃん」



あーあ。そう言いながら机に突っ伏したかなの頭を叩く。



「いったあ!」

「まだ話は終わってないの。…でもそれが、かなをまた苦しめてたんだね」

「だからー、それはお互い様っしょ」

「あのねえ」

「確かにあたしは沢山傷つけられたよ。だけどあたしも昨日の戦いで沢山傷つけた。だから、おあいこなの!」

「やっぱかな凄いわ……」

「は?」



そういう風にあっさり言うなんて、そう簡単には出来ないことだ。てかさ、なんだかんだ言って、



「円堂なんだよなあ」

「あー、やっぱり?だよねー」



吹雪に誘われたのもあるけど、サッカーをまた始めるきっかけの大半は円堂だと思う。

あの屈託のない、純粋で純真で真っ直ぐな笑顔と言葉とサッカーへの大好きだ!っていう思い。



「あたしたちもすっごい影響受けたよね」

「ま、我らがキャプテン教祖様は、みんなを照らしてくれる太陽だからね」

「そうそ……え?」



声がした方を見れば、そこにはにこにこ笑顔のりなが立っていた。



「あのー、いつからいらっしゃいましたか?」

「最初からでしたか何か?」

「「ナ、ナンダッテー!」」

「わざわざ半角片仮名にしなくてもいいでしょうが」

「そしてこのメタ発言である」

「メタ発言乙!」

「素晴らしい連携どうもありがとう」



……我が姉には一生勝てる気がしない。あの時も、昨日も、優しく厳しく(大嘘)見守ってくれたんだからね。



「りなも、ありがとう」

「やだ、あれもこれも乗り越えなきゃいけないのはゆみとかなでしょ?自分の力で壁を越えなきゃ意味がないからね。

……本当は手を貸しちゃいけない士郎には、ちょっと引っ張り上げすぎたかもしれないけど」

「おかげでなつかれてたしな……チッ」



舌打ち止めろ思いつつ、吹雪を警戒しようと心に決める。ええはいシスコンですよ、自覚済みです。

吹雪もりなだけじゃなく、円堂に豪炎寺にアフロディとちゃんとみんなの影響を受けて人格統合したんだから、結果オーライさ。



「まあ、りなにもね……」

「「ごめんなさい」」

「気にしてないから。ほら、円堂の声聞こえるよ」


「かなー!まだかー!」


「あ、鉄塔広場に朝飯前に行こうってさっき約束したんだった!」

「だったらおにぎり持ってきなよ。ほら」

「わお、用意周到!」



小腹が空いて作ったやつの残りなんだけどね。



「それじゃあ行ってきまーす!円堂ー!」

「よーし!ドリブルで鉄塔広場まで行くぞ!どっちが早くつけるか勝負だ!」

「挑むところさ!」



サッカーボールを抱えて出ていったかなと円堂の声が聞こえる。楽しそうだ。



「行ってきなよ」

「りな……」

「朝ごはん当番はあたしだからね。但し、朝ごはんまでに戻ってくること!」



そして笑顔。マジで敵う気がしないわ。行きたいなら行けというオーラが出てる。



「じゃああたしも、行ってきます!」

「いってらー」



2人を追いかけるように、あたしもドリブルをしながら走り出した。



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