イナズマ青春記

□第8話 炎との別れ
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「やーだーな、やーだな。エイリアってやーだーな。学校破壊に瓦礫のお山、何人子供を泣かせんだろな」

「……何を歌ってるんだ?」

「人間っていいなあって」

「……ふ」

「あ、笑った!笑ったね!」

「何をそんなに喜んでるんだ」

「東京出てからずっと眉間に皺が寄ってるからだよ」

「!」



ジェミニストーム戦前の、かながいきなり歌い出したかと思えば、豪炎寺に絡みだす。

聞こえているんだろう、ジェミニストームの選手たちが、複雑そうな表情でかなを見ていた。特にレーゼが。

そんなジェミニの様子など露知らずなのかあえて無視しているのか、かなは喋り続けている。



「それにしてもあの髪型ってどうやってセットしてるんだろうね!ワックス?」

「何で俺に聞くんだ」

「だってその髪ってワックスで立ててるんじゃないの?」

「いや……」

「じゃあ何?」

「秘密だ」



ちょっとだけ余裕そうな笑みを浮かべて、豪炎寺はかわした。先程までと比べて、雰囲気が柔らかくなったような。

余談だけど、豪炎寺の髪はポマードで立てている、筈。ソースは割愛ということで。



「豪炎寺フラグ……!?そんな……バカな……」

「おい」

「(まあこの試合が終わったら豪炎寺が離脱する訳だけど、分かってたけどそれはそれで複雑だし)嫌だな……」

「……どうかしたのか?」

「あー……なんでもないよ」



ゆみはゆみで悶々としてたり、ため息をついたりだ。



「試合前なのに凄いな、かなは」

「能天気っていうんだよ、アレは」



感心しているのかなんなのか、呟く風丸にそう返す。あの空気を読まないマイペースさすら、今の風丸には羨ましく思えてしまうものなのだろうか。



「見てる分には、なんだか面白いよね」

「あ、一之瀬。まあ、緊張するよりはいいんじゃない?リラックスできて」

「そうか?」

「そうだね。緊張したら体が強張るだろ?そうしたら、いいパフォーマンスは出来ないよ」

「……一理あるな」

「ね」



にこりと笑った一之瀬。その手は握り締められていて、少し息を吐いた彼は、ゆっくりと手を開いていた。

……前のジェミニとの試合、一之瀬はいなかった。結果は変わらなかったとしても、一緒に戦えなかった。それが悔しいんだろうな。



「りな、ちょっと」

「え」



一之瀬に軽く引っ張られたと思ったら、バランスが崩れて風丸の方に倒れこんだ。慌てた風丸が支えてくれる。



「大丈夫か?」

「風丸が支えてくれたから大丈夫だよ」

「で、何でこんなことしたんだ」

「風丸も少しはリラックス出来るかなって」

「ゆみとかな呼ぶぞ」

「それは勘弁かなあ」

「一之瀬お前な……」

「あはは」



一連の流れを見ていたらしい染岡が呆れていて、風丸もため息をついた。その顔はちょっと赤い。初々しくていいなあ。


スタメンにはかなが入っていた。まあ、なんとなくだろうとは思っていた。

ホイッスルが鳴り、試合が始まる。……試合、というか、一方的な展開だった。攻めても悉く止められて、相手の攻撃は止められない。

ボールをなんとか奪って、豪炎寺にパスを回ししても、シュートは決まらない。何故なら、夕香ちゃんが人質にとられてるから。



「「炎の風見鶏!」」



ボールはゴールの上へ大きく逸れ、しかも豪炎寺は着地に失敗してしまった。ああ、明らかに不調。

どんどん圧倒されていく仲間たち。どうやらあたしは、エイリアとの戦いを少しばかりなめていたかもしれない。

想像以上に、きつい。中でも豪炎寺を見てるのが辛い。また彼は、縛られるのか。

エイリア学園のエージェント達を睨みつけているかなが、何かを呟いた。聞こえたらしいレーゼが、顔を歪めている。何を言ったんだろう。


流れは変えられない。変えてはいけない。例え変えても、いつかは正しい流れに戻る。

はて、正しい流れとは何を指すのだろうか。それは私にも分からない。何せ、あたしたちがいる時点でおかしいから。

何度も何度も考えても、答えは出てこない。あたしたちのトリップの理由は、一体なんなのか。

何故、あたしたちだったのか。




“サッカーなんて大嫌い!!”


“――のバカーッ!!”





「……はは」



懐かしい思い出だ。



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