イナズマ青春記

□第6話 抹茶ソフトの宇宙人
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気づけば真っ白の空間に居た。



「……」

「やあ久しぶりだね。元気だった?突然呼び出しでごめんね。実は、」

「やっぱお前かあああああ!!!」

「うわっ」



あいつにかなが飛びかかるけど、あたしもゆみも止める気にならないので放っておく。

鋭い突きや蹴りが繰り出されるも、全部避けられている。……凄いな、かなは喧嘩慣れしてるのに。

いや、腹が立つとはいえ、こんなことで時間を使ってる場合じゃなかった。



「かな、ストップ」

「はいっ」

「で、いきなり呼び出した理由は?」

「聞いてくれてありがとう!」

「いや、早く返して欲しいからね」



ジェミニとの試合が始まったらどうしてくるんだ。



「これから2期だよね。いや、もう始まっちゃってるけどさ」

「そんなことわかってますけど」

「君たち3人は物語を変えずに見てられるのかな?」

「「「……」」」



……そういうことか。



「北海道の……この世界で初めて会った人。吹雪だったかな?

彼は二重人格だったよね。キャラバンに乗るよね。で、精神崩壊を引き起こしてしまう。

それは君たちも覚えていることだよね。さて、介入しないでいられるかな?」



……随分と勝手な言い分だと思う。こちらとしては、問答無用でトリップさせられたっていうのに。

士郎と関わりを持ったのも、元はといえばお前が原因じゃないか。

士郎だけじゃない。佐久間や源田もだ。しかも事情まで勝手にバラして、巻き込んで。

思えばいいように振り回されている。目的は一体何なんだ。



「場合によっては元の世界に戻そうかと思ってね。流れを変えられちゃ困るから」

「勝手に連れてきておきながら、無茶苦茶だ!横暴過ぎだ!」

「まあ……、わからなくもないよ。あたしたちがいることで、取り返しのつかないことが起きたら怖いし」

「それは……確かに、怖いかも」

「とにかく、大きく流れを変えるだなんなて思われるのは、心外だな」

「必殺技を習得しようとしてたのに、よく言うよ」

「あれは士郎……、いやアツヤが!」

「キャラのせいにするの?」



いちいち神経逆撫でするような言い方して!



「彼には恩がある。凍死しかけていたところを助けてくれたんだから」

「だっから!そもそもの原因は誰だと思ってんだよ!」

「あれはまあ、僕自身もちょっとやり過ぎたと思ってる」

「やり過ぎた?やっぱり吹雪も佐久間も源田も、何か理由があって接触させたね?」

「それはさておき」

「さておくな!」

「どうどう」



食って掛かるゆみを宥めなから、考える。

あたしたちがこの世界に来た理由。やはりキャラと接触することに、何か意味があるんだ。

ならその意味とは何か?何故あたしたち3人だったのか?



「質問があるんだけど」

「ノーコメントで」



……こいつ!



「ねえ、仮にあたしたちを戻すとしたら、どうするの」

「ちょ、ゆみ!」

「かなは黙ってて」

「ふむ……。君たちと彼らの記憶を消す、といったところだね」

「記憶、操作できるんだ」

「ならいっそ消してくれればよかったのにさ」

「おや、それは何故?」

「覚えてたらつまんないもん」

「かなはお気楽すぎ」

「そういうゆみは、もっとポジティブにいこうよ」

「はいはい、ストップ」



……まったくこの2人は、気を抜くとこうなんだから。



「要はアニメの大きな流れを変えるな、って言うための呼び出しでしょ」

「うん」

「ならもういいよね。話が終わったなら、早く戻して。試合が始まっちゃう」

「ああ、そのことなんだけどね……、そろそろジェミニストームとの試合終わりそう」

「「「はあ?」」」



この謎空間で話していたのはそんな長い時間じゃないのに、どうなってるの……?



「時間使いすぎちゃった。ゴメンネ」

「全く悪びれてないように見えるんだけど」

「てへぺろ」

「気色悪い」

「意外と辛辣だよね、君」

「そう」

「……じゃあ、幸運を祈るよ!」



あたしたちの下にぽっかりと空いた黒い穴。ついさっきのことを思い出した。



「「「あっ」」」


「またね」



出来ることなら、もう二度と会いたくない!



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