イナズマ青春記

□第4話 合宿だあああっ!
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夕飯作りは順調に進んで、あとは煮込むだけだ。そん中、つんつん、と先程から壁山がしきりに半田の背中をつついている。

さして気にしてはいなかったものの痺れを切らしたようで、「なんだよさっきから」と不機嫌そうに振り向いた。



「だから、トイレ……」

「トイレ?だったら行けばいいだろ」

「ひ、1人でですか?」

「は?1人でって当たり前……」

「だ、だって、お化けとか出たら!」

「おば……ってお前いくつだよ!そんなお化けなんてな!」

「……あの〜」

「で、出たーーー!!!」

「出たっすーーー!!!」



……一応言っておくと、声をかけたのは影野である。長い髪と相まって、勘違いされてしまったようだ。

俺で良かった付き合う、との申し出に、お化けでなかったことに小さく息を吐く壁山。いやほっとするのはいいけどさ、



「い、いいから、早く降りろ……」



驚いた拍子に、壁山を持ち上げるという火事場の馬鹿力を発揮した半田が、今にも潰れそうになっていた。

キーパー用のマシンの餌食になったりと、なにかと今日の半田は不幸というか不運なような。



「あたしも行こうか?」

「いいんすか!」

「あたしの仕事は終わったからね」



そうやって微笑むゆみ。相変わらずな、後輩への甘やかしっぷりだなあ……。






「大丈夫っすか……何も出ないっすか……?」

「大丈夫だから、ね?」

「ゆゆゆ、ゆみさん。肩、掴んでていいっすか?」

「お好きにどうぞ」



遠慮なくあたしの肩は掴まれた。力が入ってしまったいるのか、ちょっと痛いけど、これくらいなら我慢しよう。

夜の学校は何かと不気味だ。明かりも手持ちの懐中電灯しかない。……先生に頼んで、電気を点ければ良かった。今更だけど。



「ゆみさんは怖くないんだね」

「まあね。かながお化けとかダメでね、そういうの見る度にオーバーに反応するから、逆に冷静になれるようになったんだ」

「ふうん。かなさんは暗いところダメなんだ……」

「うん。お化けに付随してアウトになった」



かなは寝るとき必ず豆電球を点けるようにしている。消すと飛び起きて、ぎゃんぎゃん叫ぶもんだから、相当なトラウマという。

トラウマというと、これ以上のがあるんだよなあ。小学校低学年時代に……って、これ今関係ないことか。



「影野は逆に好きそうだね」

「落ち着くからね……。でも俺、目立ちたいんだ」

「その身なりなら、そこそこ目立ちそうだと思うんだけどね」



なんせ顔が隠れる程の前髪に長髪だ。色素は薄いし、ドレッドゴーグルマントを筆頭に凄いのがいるけど、影野もなかなか……まああの中じゃ普通めか。

とはいえ前言撤回するわけにもいかないので、黙る。影野はというと「俺、目立ててるんだ……!」と喜んでいた。今度アイス奢ろう。

その時、何かの足音がして、あたしに張り付くように歩いていた壁山が身震いした。



「壁山?」

「どうかした……?」

「いえ、気のせいみたいっす」



壁山が影野に向き直る。必然的に、あたしは影野の方へ向くことに。影野が背を向けている教室のドアの窓に、人影が映った。ん?



「出たっすぅぅうううっ!!!」

「ぐ、かべ、く、首がっ!影野、ごめん、1人で戻ってきて……」



……あたしの声は、聞こえただろうか。






3人を待ちつつ配膳準備をしていると、絶叫しながら猛スピードで壁山が走ってきた。首根っこを掴まれたゆみが死にかけている。

あ、かながすっ飛んでって救出した。「死ぬなあーーー!」「死んでないから」「イヤーーー!」「演技やめろ」あっはい大丈夫だそうだ。もういいや。



「ででででで、出たっすよおおおお!」

「出たって何が?」



壁山が言うには、3組の教室に出たのだと。えーと、イナズマイレブンのおじさんたち、だったっけ?



「何言ってるんですか!そんなお化けみたいな非科学的なものがこの世に……!」

「確かに誰かいた」

『えっ!?』



壁山の後ろからぬらりと現れた影野に、目金は気絶してしまった。メンタル弱いな。



「影野の言う通り、誰かいたね。でも、少なくともお化けじゃない」

「ああ。誰か大人の人がいたんだ」



ゆみも同調する。でも、この場には監督も、夏未ちゃんのお付きの場寅さんも、生活指導の菅田先生もいる。

この学校にいる筈の大人は、この3人だけなのだから、おかしい。



「もしかしたら、影山の手下じゃないか?決勝戦前に事故を起こして、相手チームが出られないようにするのは、影山の手だ」

「あり得るでやんす」

「よーし行くぞ、みんな!そいつを捕まえて、正体を暴くんだ!」

『おーっ!』

「夏未さん。火、お願い!」

「わ、分かったわ!」

「壁山。どうする?」

「むむむむりっすよゆみさん!」



どうやら壁山はここに残るようだ。



「あたしもここにいるよ!夏未ちゃんと一緒に火、見てるから!」

「かな……」



それ、分かってても暗いの怖いだけだよね。



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