イナズマ青春記

□第3話 三つ子と神(笑)と
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フットボールフロンティア準決勝を終え、残すところ1試合、決勝戦のみ。

ここまで来たら、というか、雷門サッカー部始動当初からの目標である優勝まであと少しだ。

それぞれが強い思いを胸に抱く中、



「ダメなんだ……ダメなんだよ……」



次の日、一番優勝を強く望んでいたやつが落ち込んでいるなんて、誰が予想出来るだろう。



「ダメって、何が?」

「なあ俺、ゴッドハンドで世宇子のシュート止められるのかな……」

「らしくないぞ。いつものお前なら、"やってみなくちゃわからない"って、真正面からぶつかってぶつかっていくじゃないか」

「この決勝、絶対に負けられないんだ!"やってみなくちゃわからない"じゃダメなんだ!分かるだろ!」



円堂は鬼道に食って掛かる。まあ、鬼道は敵討ちの為に雷門に転校してきた訳で、それはそれで絶対に負けられないんだけど。

普段とは全く違う円堂の様子に、みんなただただ驚くしかない。どうやら、自信を無くしたというよりかは、不安ならしい。

ゴールキーパーはゴールを守る重要なポジションだ。いや重要じゃないポジションなんてないんだけれどさ。

昨日はフォローがあって、やっとのことでトライアングルZを止めることが出来た。でも、世宇子のシュートがあれ以上なのは間違いない。

そのことを考えると……、ということだ。



「そうヘコんでるだけ時間の無駄だよ」

「そうかもしれないけど……!」



サラッとりなが毒を吐いた。これくらいじゃ更にヘコむことはないと分かって、言ったんだと思う。多分。



「彼、今までに、あんなことあったの?」

「ううん。あんな円堂君、見たこと無い…」



秋ちゃんまでもそう言うこの状況。はてさて、どうしたものか。






放課後。作戦を練るという円堂、鬼道、豪炎寺を部室に残して、風丸と染岡の主導の元、筋トレをする。

一見集中してやっているように見えるけれど、全員が時折ちらちらと部室の方を見ている。特に円堂を案じている2年が。



「円堂たち大丈夫かな…」

「ま、アニメどおりに行けば大丈夫なんじゃない?」

「声がでかい」

「ゴメンゴメン」



笑ってはいるものの、かなも微妙そうな顔をしていた。同じクラスだし、何か思うところがあったのかもしれない。



「喋りながらやるなよ……」

「染っちごめん〜」

「誰が染っちだ!」



たま○っち的なノリだな。うん。



「結構円堂悩んでるっぽいね」

「そうだな……。かなはどう思う?」

「え、あたしに聞きますか風丸さんよ」

「同じクラスだろ?」

「えー……まあ、なんとかなるさ?」

「何で疑問形……」

「ていうか、今のセリフ」

「細かいところは気にしない!」

「はいはい」



それは10年後の彼のセリフでしょうが。



「集中しろよな……」

「そうかそうか。つまり君はそういう奴なんだな」

「は?」

「byエー○ール」

「エー○ール誰だ」

「染岡はツッコミなんだな。よく分かったよ!うん!」

「何が分かったんだよ」

「染岡が染オカンという事が」

「だれがオカンだ」

「ごめん。かなっていつもこんな感じだから。気にしないで」

「あ、ああ……」



間違いなく気にしてるじゃん。かなに振り回されてる、というか遊ばれてるし。

そんな中、1年生たちが円堂たちのことを気にして、部室へ様子を見に行った。顔を見合せて、風丸と染岡とそれを追う。

部室を覗くと、「やろうぜ!」と円堂が丁度意気込んでいた。



「今さ、作戦会議やってたんだ!なっ」

「あ、ああ……」

「世宇子なんか、ぶっとばしてろうぜ!」



1年を引き連れ、部室飛び出していく。無理矢理作られた笑顔。1年ズは気づかなかったみたいだけど、あたしや他2年は気づいていた。



「円堂は壁にぶち当たったな」

「ああ」

「誰でもレベルアップすればするほど大きな壁にぶつかる。乗り越えてもっと上のレベルに行くか、そこで沈むか……。

あの諦めの悪いやつがそんな簡単に沈むとは思えないが……」

「俺たちでバックアップしていこうよ。木戸川戦の時の壁山とゆみみたいにさ。きっとそういうのも、ここがポイントってことじゃない?」



自分の胸を押さえた一之瀬に、「上手く纏めたって思っただろ」と土門ツッコミを入れる。ウインクをしながら「まあね」と一之瀬は返す。

……あたしが動いたのは、いや、動けたのは、知っていたからこそだ。知っている人間として、すべきことは何だろう?

介入し過ぎずにフォローを入れるなんて巧い芸当、あたしなんかが出来るだろうか。下手をすれば、ズレが生じるかもしれない。

……せめて、今よりも沈むことがないようにしたい。



「円堂行くぞー!」


「おう!」



円堂はシュートを打ってもらい、ひたすらにそれを止めている。



「(くよくよ考えたって何も変わらない!とにかく動く!動けば何か、掴めるかもしれない!)」


「(……大丈夫だ、円堂なら)」



知っているというだけじゃない。

巡り合わせで出会って、まだまだ知り合ったばかりで、実際に関係を持ってみれば、自ずと知らない彼も見えてくる。

本来なら、画面越しでは知りうることのなかったことだ。他のやつも例外はなく、そのうちキャパオーバーしそうだ。

だけど、みんなが、円堂がどんなやつか、本質は理解してるつもりだ。最も、"つもり"なんだけど。



「ゆみ、ディフェンスの方入って!」


「はいはいっと」



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