イナズマ青春記

□第1話 トリップしました
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ということで強制的にエターナルブリザードの練習をさせられたのだが、なんということでしょう。これがなかなか形になってきた。

自分でいうのも難だが、身体能力が高いのは自覚していたものの、必殺技を習得出来るなんて、誰が思うものか。トリップの影響で、体が適応したとか?



「上達はえーな」

「アツヤの教え方が上手いからだよ」

「お、おう」



素直に思った事を言えば、アツヤは照れ臭そうに頬を掻く。ワンマンプレイをしたがる猪突猛進な生意気君だと思ってたけど、案外可愛いところもあるな。



「ところでさ、アツヤは何であたしに教えてくれたの?」

「もしかしたら出来るんじゃねーのかなーって思った」

「なんて単純な」



そんな理由で自分の技を教えていいんかい。



「アツヤが迷惑をかけたね」

「…ああ、入れ替わったのね。大丈夫、楽しかったし」

「そう?」

「吹雪のディフェンスも凄かったね」

「……」

「どうかした?」

「名前」

「は」

「名前で呼んで」



「アツヤだけ狡い」と膨れっ面をする吹雪。こいつ自分の顔の使い方分かってるな…と思いつつも折れて「士郎」と呼んでみれば、嬉しそうに微笑んだ。

りなさん、りなさんと意味もなくあたしの名前を呼ぶ吹雪改め士郎。何故かなつかれたみたいだ。…可愛いし、悪い気はしない。

……これからの"吹雪"ことを考えると、少しだけ辛いとも思う。

その時、



「「隙あり」」



吹雪の顔に雪玉が当たった。犯人はもちろんあたしの妹である。尚、さっきまで雪だるまを作っていた模様。

吹雪は驚きはしたものの、ノリはいいらしく、「やったな!」と雪玉を投げ返し始める。


そして雪合戦が始まり、1時間近くやりましたとさ。






「そういえば、これからどうするの?」

「「「あ…」」」



すっかり忘れてた。








一旦吹雪宅に帰って考えてみる。選択肢は2つだ。

1、ここに住まわせてもらう。

2、元の世界に帰る方法を探す旅に出る。

といっても、どちらにせよ帰る方法を探すことに変わりない。

1は吹雪に迷惑をかけるからダメ。2はというと、吹雪に危ないと止められた。頼りになる相棒もいないからなあ。

だからといって、あたし達に住む場所はない。この世界での"知り合い"は、吹雪ただ1人。

住まわせても構わないとは言われても、恩人にどれだけ迷惑をかければ気が済むのか。借りは少ない方がいい。



「どうしよっか……」

「旅に出よう!」

「お前1人で行け!」

「酷い!」

「いつもこんな感じなの?」

「うん」

「面白いね」



…ゆみとかなの掛け合いが、吹雪のどんなツボにハマったのかがいまいち分からん。

それにしてもどうしようか、と4人で考え込んでいた時、



「儂、参上!」


『………』



あ! 野生の 不審者が 現れた!▼



「あれ、目の前に変な人が……」

「仮面ラ◯ダー◯王?」

「かな、それはアウトだ」

「誰?」



あたし、かな、ゆみ、吹雪の順に、それぞれ思ったことを呟く。曰く、自分は神様とのこと。



『………』



……いやあ、ないわ。



「……士郎、電話ある?警察に通報しよう。ほら、不審者が家に現れたって言ってさ」

「そうだね」

「ねえやめよう!儂の立場がなくなるから!そう!実は、3人をトリップさせたのは儂」

「行け、かな」

「アイアイサー!」



ニヤリと笑ったかなが、綺麗な飛び蹴りをかました。そして決めポーズ。申し訳程度にゆみが拍手を送る。



「で、何?今更」



そう言ったゆみの目は、冷めきっている。相当怒ってるな、これは。



「雷門中に送ろうとしたら、間違えて北海道に落としてしまってだね」

「「「あたし達凍死しかけたんですけど」」」

「すみませんでした」

「女の子を雪まみれにして、そのまま放置するなんて……最低だね」

「ちょっと黒いよこの子!恐いよ!」

「土下座をしろ。跪け、跪くんだ!さぁ、早く!」

「かなちょっとストップ」

「ハリセンと鞭、どっちがいいかな」

「ゆみもとりあえず落ち着こうか」



これは情報を聞き出すチャンスなんだから。…吹雪がボールを足元に置いてるのは、気にしないでおこう。



「何であたしたちはトリップしなきゃいけなかったの?」

「そうだな。例えるなら、"くじ引き"かな」

「嫌な例えー」

「何この神様」

「こんな神様嫌だなあ」

「あたしたちが北海道に落とされた理由は?」

「だから、間違えて……なんてね!」

「うわ、誤魔化した」

「バレバレなんだけど。ないわ」

「もう少しマシな誤魔化し方、出来ないのかな」

「ギャラリーが怖い」



口元をひきつらせる神様(仮)。かなが先陣を切って、ゆみが叩き落とし、吹雪がドドメというこの謎コンボよ。



「…あんた、本当に神様?」

「それは君たちの判断に任せるよ。でも、ある意味では、間違いなく神さ」



何だその意味深な発言は、と切り込みたかったけど、やめた。どうせ、話す気は無さそうだ。

あとキャラが意味分からない。コミカルかと思えば真面目なんだから、全く読めない。



「君の作り笑顔も読み難いけどねえ」

「! ………」



…自慢出来る特技ではないものの、表情を作るのは得意だ。なのにバレたということは、つまり、



「…さて、じゃあ行こうか」

「どこに?」

「雷門中だよ!本来ならば行くべき所はそこだ」



胡散臭い身振り手振りに、ゆみの表情が険しくなる。機嫌直すの大変だなこれ。



「雷門中…。今年のフットボールフロンティアで、快進撃をしてる?」

「十中八九、その雷門中だろうね」

「…また会えるよね」

「…会えるんじゃないかなあ」

「そうだ。携帯持ってる?メアドと番号交換しようよ!」

「うん!」



かなの提案を採用して、メアドを交換する。何かあったら連絡をして欲しいという彼は、神様(仮)よりよっぽど神様だ。






吹雪に別れを告げ、3人の視界は真っ白になった。






(…ねえ、本当に3人は雷門中へ行ったの?)
(鋭いね。まあこれは、円滑に事を進める為だよ)
((一体どういうことなんだろう……))
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