荒波少女in世界

□第4話 開幕!世界への挑戦!!
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試合当日、バスでフロンティアスタジアムへ向かう。アジア地区予選は全てこのスタジアムで行われるんだから、なんだか凄い。

今となっては見慣れたスタジアムに、見慣れたフィールド。とはいえ、公式試合はやっぱり緊張する。

本大会に行けるのは、8チーム中1チームだけ。負けられない戦いだ。

まずは開会式。財前総理の開会宣言に、会場が沸き上がった。



「このチームで世界最強になりたいね」

「ああ。その為にはまず、オーストラリアに勝たなければな」



鬼道は相変わらず冷静だけど、心なしかワクワクしているようにも見える。反面、どこか難しい顔をしているようにも思える。



「この2日間、グラウンドで練習出来なかったもんね」

「ああ……。室内でやろうにも、やはり限界はある。個々のレベルアップはある程度は出来たが、その分連携ミスが起きる可能性が高い」



個人の判断も当然大事とはいえ、チームの司令塔は鬼道だ。負けたら終わりのトーナメント。プレッシャーも人一倍なのかもしれない。

まだ雷門に来たばかりの頃を思い出す。あの時は、実力が伸びて噛み合わなくなってた雷門を、鬼道はあっという間に調整してしまった。それだけの技量がある。

けれどそれは特訓のデータや諸々があってこそだ。前に一緒に戦ってたメンバーも、雷門以外はこの数ヶ月の伸びを把握し切れてないと思う。

不安材料は沢山ある。久遠監督が何を考えているのかも分からない。けど、やるしかない。



「大丈夫!ゴールは守兄が守ってるんだし、強気に攻めていこう!」

「強気に、か。……相変わらずだな、お前も」

「そうかな。あたしだって変わったよ、色々」

「ああ、そうだな。確かに変わった。だが変わらないところもある。特に、円堂にかける人一倍の信頼はな」

「鬼道だって、守兄のこと信頼してるでしょ?」

「当然だ」



ニヤリと笑った鬼道は、いつもの鬼道に見えた。




日本対オーストラリアは第一戦で、まもなく試合時間はやってきた。スターティングメンバーが発表される。

フォワードは豪炎寺、士郎くん、ヒロト。ミッドフィルダーは一朗太、鬼道、リュウジ。

ディフェンダーは壁山、条兄、土方、夕弥。そしてゴールキーパー兼ゲームキャプテン、守兄だ。

……選ばれなかった。一瞬だけ落ち込んで、ぱんっと頬を叩く。

スタメンじゃないからって、試合に出ないとは限らない。気は抜かないし、いつでも出られるように構えてなきゃ。

「わかってねえなあ」とぼやく明王ちゃんは、スタメンが不満みたいだ。



「まあ明王ちゃんじゃあ、ただでさえ不安な連携が更に大変なことになりそうだよね」

「……言うようになったじゃねえか」

「いひゃいからつままないで」



何でみんなあたしの頬をつまむのか。


ホイッスルが鳴り響いて、試合が始まった。イナズマジャパンからのキックオフでスタートだ。

豪炎寺から受けた士郎くんがバックパスを出して、鬼道へ回る。それを尻目に、2人は前線へ上がっていく。

ここからどう攻めるか。その時、4人の選手によって鬼道が囲まれた。

抜けようとフェイントをかけても陣形が崩れず、すり抜けるように足が伸びてくる。パスコースも塞がれたて、バックパスもできない。

これが、一度囲まれてしまうと二度と抜け出せない、必殺タクティクス。ボックスロックディフェンス……!

ベンチのみんなも、唖然としている。……何でか意味深に笑っている、明王ちゃん以外は。



「……明王ちゃん、何か策あるの?」

「さあな」

「……」



変わらず笑うだけだった。教えてくれなくたって、自力で考えてやる。

そうこうしているうちに、ボールはビッグウェイブスに渡ってしまった。その上、ブロックしにいった条兄と土方がぶつかった。

……あの接触、ポジショニングの練習さえしていれば、避けられたかもしれない。



「メガロドン!」

「正義の鉄拳!」



11番の放った鮫のようなシュートを、守兄は止めることができなかった。

先制は、ビッグウェイブス。世界レベルを、思い知らされた気分だった。




→あとがき
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