荒波少女in世界

□第4話 開幕!世界への挑戦!!
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部屋に戻って、考える。グラウンドは使えない。だからといって、このままでいる訳にもいかない。なら部屋で練習すればいい。

とはいえ部屋はそう広くない。何でもいいからしないとと、明王ちゃんを真似して壁の一点に向けてボールを蹴ってみる。

……思っていた以上に難しい。いい線いってるけど、どうしてもボール半個分ずれる。これはコントロールを鍛える特訓になるな。

暫く蹴っていると、勢い余って強く蹴ってしまった。部屋の中で不規則に跳ね返るボールを、咄嗟にトラップする。



「……ん?」



もう一度強く蹴る。今度は上手くトラップ出来なかった。……不規則に跳ね返るボールを止める練習、悪くないかも!



「よしっ!やるぞー!」




部屋の中でひたすらボールを蹴って、気づけば昼になっていた。気づいた途端にお腹が鳴る。お昼食べないと。

汗をタオルで吹いて、シャツを着替える。食堂に行く途中で、洗濯物として出しておく。……たまには秋達を手伝おうかな。

食堂に行くと、丁度飛鷹と八合わせた。



「あ、飛鷹。お昼終わった?もう部屋に戻るの?」

「……それが?」

「いや、チームの皆は大体知り合いだけど、飛鷹は初めましてだからさ、色々話せたらなって。ポジションも同じだし」

「……あんた、確かキャプテンの妹だったな」

「ん?うん。双子の妹。あと、美波だからね」

「……似てるんだな」

「それ、たまに言われる」

「そうか」



それだけ言うと、飛鷹は行ってしまった。……なんだったんだろう。



「おっなかすーいたっ!」



食堂に入ると、飛鷹以外全員が揃っていた。みんな体力をもて余してるようで、あまりお腹も空いてないみたい。

部屋でもボールは蹴れるよ、と言おうとした時、目金が飛び込んできた。なんでも、オーストラリア代表の映像を入手したらしい。

わくわくしながら再生して、代表選手がボールを蹴ろうとした瞬間……砂嵐になった。そしてビーチバレーの様子が映る。

全員、ずっこけた。な、なんだこれ!?

プレーは無理でも、海で遊んでいる映像を入手したと、目金は胸を張っているけど、正直これは……。



「見る意味ねーじゃん」

「それって役立たず」



……明王ちゃんはともかく、冬花さんの辛辣っぷりが凄い。まあ海が得意なのはなんとなく分かった。

他にも秋と春ちゃんが見つけた情報もあった。何でもビッグウェイブスは、海で心と体を鍛えたチーム海の男たちらしい。海、というのに条兄が反応する。

かくいうあたしも、水系の必殺技を使う選手としては、気になる相手だ。



「特に守備が堅く、相手の攻撃を完全に封じてしまう、未知の戦術があるそうです」

「どう守備を崩して得点するかがポイントってことだね」

「へえ、おもしれえじゃねえか」



じっとしてられない!と守兄が食堂を飛び出して、後退りながら戻ってきた。現れたのは久遠監督だ。



「昼食が終わったのなら、部屋に戻れ」

「監督!練習をさせてください!」

「同じことを何度も言わせるな」

「っ……」



……ここまで言うことを考えると、やっぱり何か理由があるのかもしれない。その理由はさっぱり分からないけれど。




部屋の中でボールを蹴り続けて、大分経った。反応も良くなってきていて、手応えを感じる。

外には出てないけど、窓から見るに虎丸が帰って、飛鷹が一時的に外出して、条兄は飛び出していったっきり。

虎丸は毎日家から通ってたけど、今日もそれが許可されてるあたり、何か深い事情がありそうだ。

ボールをひたすら蹴っていると、ノック音がした。



「どうぞ!……あ、士郎くんにヒロト」

「お邪魔します。美波ちゃんも、部屋でやってたんだね」

「あたしも?」

「キャプテンが、ね」



廊下に出てみると、みんな守兄の部屋の前に揃っていて。中には豪炎寺と鬼道もいるようで、聞き耳を立ててるらしい。

あたしも倣って聞き耳を立てる。話しているのは、あたしたちが目指す、世界一についてのこと。



「俺さ、みんなと一緒に見てみたいんだ。すっげーやつらと全力でぶつかりあって、勝ち残ったやつだけが見られる、世界一のサッカーってやつを。

だから、挑戦しようぜ!世界一に!フットボールフロンティアインターナショナルで、優勝するんだ!」

「世界一に!」



皆で顔を見合わせる。我慢出来なくなって、雪崩れるように飛び込んだ。



『世界一に!』



立てた人差し指を掲げる。

世界一になった時、見える景色はどんなものなのだろう。

このメンバーなら、きっとそこへ行ける。そう、強く思った。



「よし、優勝しようぜ!」

『おーっ』



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