荒波少女in世界

□第2話 誕生!イナズマジャパン!!
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玲名たちが試験の相手。その事実に、ごくりと唾を飲み込んだ。



「だから言っただろう。"またあとで"と」


「確かに、"あとで"だね」



驚きはした。でも、なんらおかしいことじゃない。実際、玲名たちは強い。身をもって経験してるんだから。

でも、あたしが知っている実力はかれこれ3ヶ月前のものだし、今はどれほど強くなっているか。

お日さま園からは、玲名、布美子、ルル、マキ、クララ、杏が参加していた。それ以外は、かつて戦ったことのある学校の選手だ。

ゴールキーパーには御影専農の杉森。ダークエンペラーズ戦以来だけど、その目は真っ直ぐだ。

野生からはフォワードに、千羽山からはディフェンダー、漫遊寺からはミッドフィルダー……と全国レベルが勢揃いだ。

強敵ばかりだけれど、やるしかない。勝つのが絶対条件というわけでもないんだ。

100%の力を出し切って、自分のサッカーをする。それだけだ。

みんなと世界に行く為に、こんなところで立ち止まってなんかいられない。壁を、乗り越えるんだ!



「手加減はしないぞ」


「上等!そんなの当たり前だよ!」



手加減なんて相手選手への冒涜だ。本気の勝負で勝ち取ってこそ意味がある。



「絶対に、世界に行くんだから!」



みんなと一緒に、



「――キックオフ!」



まだ見ぬ世界に、行きたいから。



「サザンクロスカット!」


「水龍ッ!」



負けないよ。




***


「っは……、」



選考試合の後半も、半分を切った。点差は10点。よく押さえたと自分で自分を誉めたくなるくらいの猛攻だった。

特に玲名のシュートはそこらの男子顔負けのパワーだ。当然のことだけど、あの時と比べると格段に強い。

ボードを片手に何か書いている人たちは、もうとっくに気にならなくなった。

気にした方がいいのかもしれないけど、他人の評価を気にしてる暇なんて露程ない。目の前のことで精一杯。

そうしないと、簡単にやられる。言いたかないけどあたしは女子だし、相手は男女混合とはいえ11人。



「(きっついなあ……)」



あたしのポジションはディフェンダーで、得意なのもディフェンスだ。だから、選考において重要視されるのもきっとそこだ。

けれど、これは日本代表を決める試合なんだ。男子の中に混じって、女子のあたしが戦うための。ディフェンス力だけじゃダメだ。

例えば、一朗太はあの速さで翻弄したり、自ら持ち込んだ上で連携すればシュートだって打てる。

条兄は強力なシュートを持っているし、壁山だって連携技がそうだ。栗松と夕哉は小回りが利く。みんな、あたしにないものを持っている。



「荒波V2!」



守りだけならはそこそこの実力はあると自負しているけれど、あたしレベルの選手なんて他にもいると思う。

そんな中で、女子のあたしは候補として選ばれた。なら、ディフェンス以外のところも、見せなきゃならない。

シュートもドリブルもまだまだだろう。それこそ、あたし以上の選手は沢山いる。でも、今できる最大限を精一杯やるだけだ!



「フローズンスティール!」

「マリンアクセル!」



最後のチャンス。……なんとしても、点を取る!

軽く蹴り上げたボールを後ろ回し蹴りで回転をかける。火花が散ったボールに、一回転して右足を振りぬいた。



「炎華!!!」



昨日なんとか完成させたシュート。炎を纏ったボールは、火の花びらを散らしながらゴールへ突き進む。

そして杉森のダブルロケットを打ち破って、ネットを揺らした。



「やった……!」



1点、取れた……!

同時に終了のホイッスルが鳴る。……終わったんだ、選考試合が。

暫く待っているとように言われて、選考委員の人が去っていく。気が抜けて、あたしはフィールドに座り込んだ。

息を整えていると、玲名たちがやってきた。



「大丈夫か」

「うん。流石に疲れたけど」

「もう一歩も動けないって感じね」

「あはは……」

「美波、凄かったッポ」

「強くなったんだ」

「みんなだってそうだよ!」



緊張したけど、エイリア……ううん、お日さま園のみんなとまたサッカーが出来てよかった。



「最後のシュート、熱い思いを感じた」

「ありがとう杉森。また守兄たちとも、サッカーやろうよ」

「……そうだな。練習試合でも組めたらいいのだが」

「やろうやろう!世界大会が終わってからになっちゃうだろうけど」

「選ばれると確信してるんだな」

「もちろん!なんてったって、守兄だよ!一朗太も豪炎寺も鬼道も士郎くんも……」

「円堂?」

「……いや、落ちる人もいるんだよなって」



候補は22で、代表枠は16人。6人、絶対に落ちる。そう考えると、ちょっと気が重い。



「自分だってどうなるかわからないのに、お人好しね。落ちたらどうするの」

「く、クララ……。……全力は出したし、その時はその時だよ」

「……どうやら、それが分かる時が来たみたいだな」

「あ」



玲名の言葉に通路の方を見れば、選考委員の人たちがやってきた。結果が、出たんだ。

ぶわっと冷や汗が出てきた。その時はその時、なんて嘘だ。受かりたい。世界に行きたい。知らない世界を見てみたい。



「結果を発表する」



日本代表として戦いたい。世界一を目指して、みんなと。だから――!



「円堂美波……合格だ!」



……受かった?



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