荒波少女in世界

□第1話 集結!日本代表!!
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みんなで話していると、体育館のドアが開いて、響木監督と秋、なっちゃん、春ちゃんが入ってきた。



「みんな揃ってるか?」



そう声をかけられて監督の所へ集まる。その時、風を切る音と共に、鬼道へボールが飛んできた。

鬼道が蹴り返した先には、ボールを踏みつけニヤリ笑う、たったさっき思い出していた明王ちゃんがいた。ほんとに来てた……。



「不動!?」

「不動、何の真似だ!」


「挨拶だよ挨拶!シャレの分かんねえやつ」



ギョッとしたような声を上げるさっくんに、明王ちゃんに向かって怒鳴り付ける鬼道。2人共、愛媛でのあまり良くない記憶があるからだろう。

それは他のみんなも同じだった。足を怪我させられた染岡はもちろん、染岡と特に仲が良かった士郎くん、怯えていた夕弥は、厳しい目で明王ちゃんを見ている。

守兄も一朗太も、顔を顰めていた。



「響木さん!まさかアイツも!」



さっくんの言葉に監督が笑う。まるで、この反応は想定内とでも言うようだった。



「……明王ちゃん、とりあえずそこでぼっちやってないでこっちに来なよ」


「……うぜえ」


「はい!?」



それでも、舌打ちする癖にに歩いてくる辺り、明王ちゃんは素直じゃない。あ、髪の毛引っ張られた。地味に痛い。

「これで全員揃ったな」と息を吐いた響木監督は、声を張り上げた。



「いいか、よく聞け。お前たちは――日本代表の強化選手だ!」



…………え?



「日本代表?一体何の?」



曰く、今年からフットボールフロンティアの世界大会、フットボールフロンティアインターナショナル、通称FFIが開催されるらしい。



「少年サッカー世界一をかける大会だ。お前たちはその代表候補なんだ」

「世界……。……ううあああ!!!すげーぞみんな!次は世界だっ!」


『おーっ!』


「ほら明王ちゃんも!おーっ!」

「離せバカ女」



腕を引っ張ったら振り払われた。なんだよもう、ノリ悪いなあ……。ノってたら、それはそれでなんか変だけど。



「世界か……」

「遂に世界と戦えるんだな」

「円堂さん!頑張りましょう!」

「腕が鳴るぜ!日本一の次は宇宙一、宇宙一の次は世界と来た!」

「染岡、その順番絶対違う」

「そもそも宇宙一にはなってないけどね、うししっ!」



夕弥の頭にチョップを落とす。ヒロトとリュウジの古傷を抉るようなことは、言わないで欲しい。



「あくまでこの22人は候補だ。この中から16人に絞り込む」



……22人?



「まず11人ずつ、2つのチームに分かれます。その2チームにより2日後、日本代表選手選考試合を行います」



………11人ずつ?



「では、メンバー編成を発表します」



Aチームは、守兄、士郎くん、ヒロト、さっくん、条兄、染岡、飛鷹、壁山、土方、マックス、武方

Bチームは、鬼道、豪炎寺、一朗太、立向居、明王ちゃん、リュウジ、夕弥、虎丸、栗松、シャドウ、目金(弟)

11人ずつってことだから、余るならあたしだろうとは思ってたけど、あたしって何で呼ばれたんだろ……。後で聞かないとな。



「どーぞよろしく、鬼道クン?」

「黙れ!」

「ご不満のようだけどさあ、俺だって響木監督から認められてここに来てんだぜ?」

「……分かっている」

「分かりゃいいんだ分かりゃ」



そう言って明王ちゃんは輪から離れていく。うん……、変わってない。その背中を、ギリ、と歯を食い縛りながら、さっくんが睨み付けていた。

鬼道はなんとか冷静を保っているけれど、さっくんはそうでもないみたいだ。……影山の元で、禁断の技を使ったからかな。

不思議そうな土方に「相手にすんな」と声をかけるあたり、染岡は成長したと思う。



「円堂、鬼道、お前たちがそれぞれのキャプテンだ。いいな」

「はい!」

「……はい」

「試合は2日後。1人1人の能力を見る為に、連携技は禁止とする!持てる力を全てを出してぶつかれ!」

『はい!』



それだけ言うと、響木監督は用事があるらしく、踵を返して体育館から出て行こうとする。いや待って待って!



「あの、響木監督、あたしは何で呼ばれたんですか?多分FFIって、男子だけの大会ですよね?」

「ああ……お前はまた別の特別枠での候補だ。財前総理の推薦でな」

「ざっ、財前総理の!?」

「そうだ。基本的にこの大会は男子だけだが、申請をして規定に合格すれば、女子も出られる。まあ、この申請をしたのは日本だけだがな」

「うわあ。それ物凄いプレッシャーですよね……」



女子があたしだけって……、うわ今から緊張してきた。鳥肌が立つ。



「お前の選考は明日からだ」

「明日!?い、いきなり過ぎますよ!」

「そう慌てるな。明日はただの体力テストみたいなもんだ。まあ、結果次第では――」

「……結果次第では?」

「その時点で落とされる」

「でっすよねー!」



どうやら明日は基礎的な能力の測定で、二日後、守兄たちの選考日に、サッカーの能力をテストするらしい。



「基礎的な能力に関しては、お前なら問題ないだろう。だが、明後日は分からんぞ」

「……当然、やるからには絶対に受かりますよ!」

「その意気だ」



みんなと世界に行きたい。そんな気持ちがふつふつと沸き上がってくる。

まだ決まったわけでもないのに、わくわくが止まらない。あたしも、世界で戦えるんだ!



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