荒波少女

□第37話 終わりなき脅威!
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真っ直ぐと、寸分の狂いもなく、玲名の放ったシュートは吉良さんへと一直線に飛ぶ。



「(ぶつかる――!)」



けどその間に、赤が飛び込んだ。



グ「っ………」



シュートから吉良さんを庇ったのは、ヒロトだった。



ウ「グラン、お前…」



少しだけ笑みを浮かべながら、強力なシュートを腹に受けたヒロトはフィールドへ倒れ込む。


背筋が、冷えた。



「ヒロトッ!」

円「ヒロト!大丈夫か、ヒロト!」

グ「美波ちゃん、円堂君……っ………」


ウ「何故だ…何故だグラン!そいつは私達の存在を否定したんだぞ!そいつを信じて、戦ってきた私達の存在を!美波も、何故!」


「…このシュートが当たってたら、絶対に、一生後悔するよ」


ウ「っ…、私達は全てをかけて戦ってきた!ただ…強くなる為に!それを今更間違っていた!?そんなことが許されるのか!グラン!」



昂った感情をそのままぶつけるかのように糾弾をする玲名に、ふらつきながらも立ち上がって、ヒロトは口を開く。



グ「確かに……確かに、ウルビダの言う通りかもしれない。お前の気持ちも分かる。でも…それでもこの人は、俺の大事な父さんなんだ!」



後方で、吉良さんが身動ぎした。一瞥すると、呆然とこちらを見つめている。



グ「…勿論、本当の父さんじゃないって事は分かっている。ヒロトって名前が、ずっと前に死んだ、父さんの本当の息子だって事も」


鬼「本当の息子?」

瞳「ええ」



本当の息子…。もしかしてその人が、瞳子監督のお兄さんの…、"ヒロト"さん?



グ「っ…」

「!、大丈夫!?」

グ「ありがとう。…それでも構わなかった。父さんが、俺に本当にヒロトを重ね合わせるだけでも!


父さんが施設に来る日が、楽しみでしょうがなかった…。父さんが喜ぶ顔を見てるだけで、嬉しかった…。


たとえ存在を否定されようと、父さんがもう、俺達の事を必要としなくなったとしても…それでも、


…父さんは、俺にはたった1人の父さんなんだ!」



辛そうで、だけど、ヒロトの強い思いが伝わってくる。吉良さんの事が、大好きなんだって。



吉「ヒロト…お前はそこまで私を…。…私が間違っていた。私にはもう、お前に父さんと呼んでもらえる資格などない」



そう言った吉良さんが、ボールを玲名の足元へ放る。



吉「さあ打て。私に向かって打て、ウルビダ」

グ「父さん!」

吉「こんな事で、許してもらおうなどとは思っていない。だが、少しでもお前の気が収まるのなら!さあ打て!」



足元のボールに目を落とし、吉良さんを見つめる玲名の表情が険しくなって、その足を振り上げた。


今度は別の意味で背筋が冷える。訓練を積み重ねている上にリミッターを解除したままの玲名のシュートを吉良さんが受けたら、ひとたまりもない。



ウ「はああああっ!」


円「ウルビダ!」

「玲名止めて!」



――けど、その足が振り抜かれる事はなかった。玲名はその場に蹲って、搾り出すように叫んだ。



ウ「打てない…打てる訳ない…!だって、だって貴方は……私にとっても、大切な父さんなんだ……っ!」



堰を切ったように涙を流した玲名に影響されたのか、他のジェネシスメンバー…布美子達も泣き出した。


しん……と辺りが静まり返る中、守兄ぃにヒロトを預けると、あたしは玲名の所へ足を向けた。



「…泣かないで、玲名」

ウ「##NAME2##、##NAME3##っ…ぅ……あぁっ………」


吉「…私は人として恥ずかしい。こんなにも私を思ってくれる子供達を、単なる復讐の道具に…」

鬼瓦「話してもらえませんか、吉良さん。何故ジェネシス計画というものを企てたのか。どこで道を誤ってしまったのか」



「巻き込んでしまったあの子達の為にも」と、やってきた刑事さんがそう訊ねると、吉良さんは口を開いた。



吉「グランの言う通り…私にはヒロトという息子がいた…」



"ヒロト"さんはサッカーがとても好きな子で、夢はサッカー選手になる事だった。


でも、サッカー留学をした海外の地で、謎の死を遂げた。


吉良さんは真相の解明を求めたけど、事件には政府要人の1人息子が関わっていた。


その為、"ヒロト"さんは事故死として処理されてしまった。


吉良さんは何もしてやれなかったという悔しさと喪失感に心に穴が開いて、生きる気力さえも無くしてしまったそうだ。



吉「そんな時だった。瞳子が、親をなくした子供達の施設、お日さま園を薦めてくれたのだ。


初めは娘の頼みと思い作ったお日さま園…。子供達の笑顔に、私の心の傷も癒えていった。


本当に、お前達には感謝している。お前達がだけが、私の生きがいだった。


そして、5年前…」



エイリア石が、飛来した。




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