荒波少女

□第36話 最終決戦!ザ・ジェネシス・後編!!
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円「ボールを寄越せえっ!」


塔「円堂…」


壁「あんなキャプテン、初めてッス…」


「あたしだって、見た事無いよ…」



守兄ぃはいつだってサッカーに対して真っ直ぐで、あんなプレーをするのは一度も見た事なかった。


それ程までに怒(いか)ってて、それを抑えきれていない。ただただ、感情のままに動いている。だから甘さが目立つ。


フォローを入れつつも、誰も声をかけようとはしない。つまるところ、皆気持ちは同じで、分かるからこそ何と言えばいいか分からない。



前半戦が終わった。



テクニカルエリアに座り込んだ守兄ぃは、息を切らしながらも、吉良を怒りのこもった目で睨んでいた。



「守兄ぃ…」

瞳「…私が行くわ」



立ち上がった瞳子監督が、守兄ぃに声を掛ける。



瞳「円堂君」

円「風丸達は弱くない。俺が証明します!……しなきゃならないんです、俺が……!」

瞳「…私も最初はそう思っていた。私1人の力で、父の目を覚まさせようって」

円「監督?」

瞳「でも、出来なかった。誰かの心を、考えを変えさせるなんて大変な事。1人の力でなんて、とても出来ない。


ただ、1人では無理でも、皆の力をあわせれば、どんなことでも出来る。それを教えてくれたのは、円堂君、貴方達よ」

円「俺達…?」

吹「そうだよ、キャプテン」



瞳子監督の言葉を繋げるように、士郎君が続ける。



吹「僕を間違った考えから解き放ってくれたのも、雷門の皆だ」

円「皆…」



拳を握り締めた守兄ぃが、訴えかけるようにあたしを見た。…いや分かるけど、あたしなんかがやっていいことなのか。


視線で急かされる。苦笑いをしながらため息をついて、右腕を振りかぶって、守兄ぃの顔に向かって振り抜いた。



「おらあっ!」

「っ、」


『!』



あたしに全力ではたかれた守兄ぃは、しりもちをついた。皆が驚いてる中守兄ぃは立ち上がると、頭を下げた。



円「ごめん!」

豪「…円堂、怒っているのはお前だけじゃない」

鬼「俺達全員、ここにこれなかった奴らの気持ちを引き継いでいるつもりだ」

円「豪炎寺…鬼道…」

綱「そいつらが弱くねえって事、証明しようぜ!」

塔「やろう、円堂!一緒に!」

円「皆…」



守兄ぃの表情が、いつものサッカーが大好きな守兄ぃに戻る。


お互いに顔を見合わせて、笑う。皆の気持ちが、改めて1つになったのを感じた。



円「絶対に、勝つ!」

『おーっ!』



フィールドに立ってても、ベンチに座ってても、勝ちたいという皆の思いは1つなんだ。



一「…何で円堂の事叩いたんだ?」

「え、ぶん殴ってくれって目で言ってたから?」

一「……分かったのか?」

「うん」

一「(双子なんだよな…)」

「あ、あたしももう行くね」

一「ああ、頑張れよ」





円「立向居!頼んだぜ!」

「立向居なら、きっとやれるから!」

立「は…はい!」



ピーッ!



角「後半開始!1対2とリードされている雷門!ジェネシスの強烈な攻撃と鉄壁の守備に!どう立ち向かうのか!」


円「……ヒロト!」


グ「君に俺を抜く事は出来ない」



一瞬だけ守兄ぃは歯を食い縛ると、意表を突くように後ろから上がってきていた鬼道へバックパスを出した。

みんなが、仲間がいる。だから、1人でプレイする必要なんてないんだ。



グ「前半とは違うという訳か!」



鬼道からあたし、土門、塔子、士郎君と連続でボールを繋いでいく。



「『マリンアクセル』!鬼道っ!」


グ「何だ…どうなっている!?」



鬼道から守兄ぃへボールは渡り、鬼道と土門も駆け上がる。



円「(俺には仲間が居る。ここまで戦ってきてくれた仲間がいる。新しく加わってくれた仲間が居る。いつも見守ってくれた、仲間が!)


俺達の強さは、そんな仲間達と共にあるんだ!」



蹴り上げられたボールに向かって、守兄ぃ、鬼道、土門が紫の三角形のサークルを描きながら跳び上がった。



「「「『デスゾーン2』!!!」」」



ネロの『時空の壁』に阻まれつつも、勢いは殺されることなく、紫色の光を放ちながらゴールへと突き刺さった。



円「よし!」


「やったね!3人共!」



これが仲間の、雷門の力なんだ!




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