荒波少女

□第36話 最終決戦!ザ・ジェネシス・後編!!
1ページ/6ページ

勢い付いていた雷門に、ジェネシスの必殺技『スーパーノヴァ』が牙を剥いた。


冷や汗がどっと吹き出して、スコアボードをまじまじと見つめる。


士郎君のおかげで同点に追い付いたかと思えば、シュートは止められて、また差をつけられてしまった。


…気持ちを切り替えないと。ユニフォームの裾で流れる汗を拭った時、耳に飛び込んできた吉良の言葉に絶句した。



吉「ジェネシスこそ新たなる人の形。世界を支配する真の力を持つ子供達です」



なんだよ、それ。



円「っ、大好きなサッカーを穢すな!」


吉「どういう意味です?」


円「力とは、皆が努力して付けるものなんだ!」


吉「忘れたんですか?貴方達もエイリア石でパワーアップしたジェミニやイプシロンと戦う事で、強くなったという事を」



守兄ぃの叫びを、吉良はそう言って切り捨てた。…確かにそうかもしれないけど、それだけじゃない。


唇を噛みしめ、拳を握る。皆も、敵意を剥き出しにして吉良を睨み付けていた。



吉「そう、エイリア石を利用したという意味では、ジェネシスも雷門も同じなのです」


「…確かにあたし達はエイリア学園を倒すために強くなった。けど、利用なんかしてない。雷門は特訓に特訓を重ねて強くなったんだ!」


吉「本当にそれだけなのでしょうか。


雷門もすっかりメンバーが変わって強くなりましたね。ですが、道具を入れ換えたこそここまで強くなれたんです。


我がエイリア学園と同じく、弱い者を切り捨て、より強い者へ入れ換えたことで」



……道具?誰が?道具って、あたし達のことを指してるっていうのか。


入れ換えたから強くなった?一朗太が、染岡が、半田が、影野が、マックスが、栗松、宍戸、少林が、


弱い、だって?



円「ふざけるな!弱いからじゃない!」

「皆は弱くなんかないっ!」



ジェミニストームとの最初の試合で入院してしまい、ベッドの上で悔しげだった半田達。


真・帝国学園との試合の中での怪我が悪化して離脱した染岡。


……ジェネシスの圧倒的な力の前に、チームを離れた一朗太と栗松。


皆との思い出が、頭の中を駆け巡る。


…皆を切り捨てたりなんかしてない。皆は強いから、いつかまた一緒にサッカーが出来るって、そう思ってる!



「弱くなんかない!皆を、サッカーを、侮辱するなッ!!!」


吉「いいえ、弱いのです。だから怪我をする。だからチームを去る。実力が無いから脱落してきたのです」


円「違う!」


吉「彼らは、貴方達にとって無用の存在」


円「違う、違う、違うッ!アイツらは弱くない!絶対に違う!俺が証明してやる!」



1人特攻していった守兄ぃから、グランはすれ違いざまにボールを奪った。


何度も何度も突っ込んで、ぶつかり合って、怒りをぶつけるだけの、守兄ぃらしくない荒々しいプレー。


それを流すように、嘲笑いながらグランはプレーをしている。まるで、弄んでいる様だ。



「守兄ぃ…」



……多分、一歩間違えたら、あたしも同じようにしていただろう。守兄ぃが先に動いて、その怒りからのプレーを見たからこそ、逆に冷静になった。


気持ちはよく分かる。あたしだって怒ってるよ。でも、その怒りをサッカーを通してぶつけちゃダメなんだ。サッカーは、楽しいものなんだから。


だから、あたし達がそんなプレーをしちゃ、ダメなんだ。



グ「円堂君、キーパーに戻りなよ。君がキーパーじゃないと、倒し甲斐がないよ」


円「黙れ!」



守兄ぃをかわしたグランは、ウルビダ、ウィーズと『スーパーノヴァ』を放った。


それに対して壁山、夕弥、条兄ぃ、土門が身体をはって威力を落とそうとする。


『ムゲン・ザ・ハンド』は破られてしまったけど、前線から戻ってきていた豪炎寺と士郎君が蹴り返した。


蹴り返して跳ね上がり、ゴールポストに当たったボールに、一瞬だけチラリと炎と氷が見えた。


グランに渡らないように、ボールはあたしがトラップする。



グ「全員でカバーしなければならないキーパー。君達の弱点であり、敗因となる」


「…そんなことないよ」


グ「あるさ。現に、君の仲間は無駄に傷ついているじゃないか」




そこからは、痛めつけるようなジェネシスの猛攻だった。



円「アイツらは弱くない!」



ボールを奪おうと向かって行っても、吹き飛ばされてしまって、



円「俺が、証明する!」



怒りに身を任せてプレーをしている守兄ぃは、翻弄されっぱなしだ。



「くそっ……大丈夫か!立向居!」


立「………はい!美波さんは、」


「あたしは平気!」



なんとか弾いたボールがラインを割って、試合が一旦止まる。防戦一方で、体力の消耗が激しい。


このままじゃまずい。…特に、守兄ぃがこのままだと。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ