荒波少女
□第36話 最終決戦!ザ・ジェネシス・後編!!
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勢い付いていた雷門に、ジェネシスの必殺技『スーパーノヴァ』が牙を剥いた。
冷や汗がどっと吹き出して、スコアボードをまじまじと見つめる。
士郎君のおかげで同点に追い付いたかと思えば、シュートは止められて、また差をつけられてしまった。
…気持ちを切り替えないと。ユニフォームの裾で流れる汗を拭った時、耳に飛び込んできた吉良の言葉に絶句した。
吉「ジェネシスこそ新たなる人の形。世界を支配する真の力を持つ子供達です」
なんだよ、それ。
円「っ、大好きなサッカーを穢すな!」
吉「どういう意味です?」
円「力とは、皆が努力して付けるものなんだ!」
吉「忘れたんですか?貴方達もエイリア石でパワーアップしたジェミニやイプシロンと戦う事で、強くなったという事を」
守兄ぃの叫びを、吉良はそう言って切り捨てた。…確かにそうかもしれないけど、それだけじゃない。
唇を噛みしめ、拳を握る。皆も、敵意を剥き出しにして吉良を睨み付けていた。
吉「そう、エイリア石を利用したという意味では、ジェネシスも雷門も同じなのです」
「…確かにあたし達はエイリア学園を倒すために強くなった。けど、利用なんかしてない。雷門は特訓に特訓を重ねて強くなったんだ!」
吉「本当にそれだけなのでしょうか。
雷門もすっかりメンバーが変わって強くなりましたね。ですが、道具を入れ換えたこそここまで強くなれたんです。
我がエイリア学園と同じく、弱い者を切り捨て、より強い者へ入れ換えたことで」
……道具?誰が?道具って、あたし達のことを指してるっていうのか。
入れ換えたから強くなった?一朗太が、染岡が、半田が、影野が、マックスが、栗松、宍戸、少林が、
弱い、だって?
円「ふざけるな!弱いからじゃない!」
「皆は弱くなんかないっ!」
ジェミニストームとの最初の試合で入院してしまい、ベッドの上で悔しげだった半田達。
真・帝国学園との試合の中での怪我が悪化して離脱した染岡。
……ジェネシスの圧倒的な力の前に、チームを離れた一朗太と栗松。
皆との思い出が、頭の中を駆け巡る。
…皆を切り捨てたりなんかしてない。皆は強いから、いつかまた一緒にサッカーが出来るって、そう思ってる!
「弱くなんかない!皆を、サッカーを、侮辱するなッ!!!」
吉「いいえ、弱いのです。だから怪我をする。だからチームを去る。実力が無いから脱落してきたのです」
円「違う!」
吉「彼らは、貴方達にとって無用の存在」
円「違う、違う、違うッ!アイツらは弱くない!絶対に違う!俺が証明してやる!」
1人特攻していった守兄ぃから、グランはすれ違いざまにボールを奪った。
何度も何度も突っ込んで、ぶつかり合って、怒りをぶつけるだけの、守兄ぃらしくない荒々しいプレー。
それを流すように、嘲笑いながらグランはプレーをしている。まるで、弄んでいる様だ。
「守兄ぃ…」
……多分、一歩間違えたら、あたしも同じようにしていただろう。守兄ぃが先に動いて、その怒りからのプレーを見たからこそ、逆に冷静になった。
気持ちはよく分かる。あたしだって怒ってるよ。でも、その怒りをサッカーを通してぶつけちゃダメなんだ。サッカーは、楽しいものなんだから。
だから、あたし達がそんなプレーをしちゃ、ダメなんだ。
グ「円堂君、キーパーに戻りなよ。君がキーパーじゃないと、倒し甲斐がないよ」
円「黙れ!」
守兄ぃをかわしたグランは、ウルビダ、ウィーズと『スーパーノヴァ』を放った。
それに対して壁山、夕弥、条兄ぃ、土門が身体をはって威力を落とそうとする。
『ムゲン・ザ・ハンド』は破られてしまったけど、前線から戻ってきていた豪炎寺と士郎君が蹴り返した。
蹴り返して跳ね上がり、ゴールポストに当たったボールに、一瞬だけチラリと炎と氷が見えた。
グランに渡らないように、ボールはあたしがトラップする。
グ「全員でカバーしなければならないキーパー。君達の弱点であり、敗因となる」
「…そんなことないよ」
グ「あるさ。現に、君の仲間は無駄に傷ついているじゃないか」
そこからは、痛めつけるようなジェネシスの猛攻だった。
円「アイツらは弱くない!」
ボールを奪おうと向かって行っても、吹き飛ばされてしまって、
円「俺が、証明する!」
怒りに身を任せてプレーをしている守兄ぃは、翻弄されっぱなしだ。
「くそっ……大丈夫か!立向居!」
立「………はい!美波さんは、」
「あたしは平気!」
なんとか弾いたボールがラインを割って、試合が一旦止まる。防戦一方で、体力の消耗が激しい。
このままじゃまずい。…特に、守兄ぃがこのままだと。
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