荒波少女
□第35話 最終決戦!ザ・ジェネシス・前編!!
1ページ/6ページ
倒れこんだ立向居を、条兄ぃが起こしている。…福岡の時と比べると、威力が格段に上がっていた。
これがジェネシスの……エイリア石の力なの?
一「何て奴らだ…。本当に俺達と同じ人間なのか?」
「…人間だよ。確かに、あたし達と同じね…」
あたし達と同じ、サッカーが大好きな人間だ。
円「ヒロト!お前達のサッカーは間違ってる!本当の力は、努力して身に付けるものなんだ!」
「っ、そうだよ!エイリア石なんかで強くなっても…!」
グ「果たしてそうかな。我らジェネシスこそ、最強なのだ」
背を向けて、グランは戻っていく。リュウジに助けてあげてって言われたし、あたしだってまた楽しいサッカーがしたい。
けど、あんな強力なシュートを止められる?あたしの実力で…。
円「言葉で分からないなら、プレーで伝えるしかない…!」
「守兄ぃ…」
…そうだ、まだまだ試合は始まったばかり。諦めちゃダメなんだ。勝たないと、ヒロトの為にも、
「しろ君の為にも…」
振り向けば、立向居が手を見つめて震えていた。皆も俯いている。
立「『ムゲン・ザ・ハンド』が破られた…。パワーアップした筈なのに…!」
木「パワーが違い過ぎる…!」
鬼「マズイ…。究極奥義が破られた事で、皆動揺している…」
「最初から諦めちゃダメだよ!まだまだ試合はこれから!頑張ろう!」
綱「でもよお…」
瞳「顔を上げなさい!」
『!』
凛とした声が響く。ベンチを見れば瞳子監督が立ち上がって、凛とした意思の強い目があたし達を見ていた。
瞳「今日までの特訓を思い出して!貴方達は強くなっている!諦めず、立ち止まらず、1歩1歩積み重ねてここまで来た!
自分を信じなさい!そうすれば、貴方達は勝てる!私は、信じているわ!」
そうだよ。最初はセカンドランクだったジェミニストームにでさえ歯が立たなくて、勝てなかった。
けど、特訓して特訓して特訓して、イプシロンを倒して、ダイヤモンドダストと引き分けた。
そして今は、ジェネシスと戦えるくらいの実力になったんだ。あたし達は確実に、強くなってるんだ!
円「監督の言う通りだ!皆!絶対勝つぞ!」
『おーっ!』
「(……それにしても、)」
ヒロト――グランは「果たしてそうかな」と返した。守兄ぃの本当の努力して身に付けるもの、というのを否定しているのだと思った。
けど、何かが引っ掛かる。……なんだろう、この違和感。
鬼「集中しろ、美波」
「う、うん」
ピーッ
角「先取点を奪われた雷門!意気消沈するどころか、勢いよく攻め上がる!」
「立向居!」
立「美波さん…」
「立向居は守兄ぃの代わりなんかじゃない!君は、立向居勇気なんだ!」
立「!」
立向居は自分を守兄ぃの代わりだって思ってるみたいだけど、それは違う。
例え似ていたとしても、同じ人間なんて存在しないんだから。しろ君と、アツヤのように。
豪「『爆熱ストーム』!」
ボールを持った豪炎寺が、ゴールとは逆方向へのシュートを放つ。一見可笑しくみえるかもしれないけど、そんなことはない。あれは、
グ「何っ!?」
「守兄ぃへのパスだ!」
豪「行け!円堂!」
円「『メガトンヘッド』!」
ネ「『プロキオンネット』!」
『爆熱ストーム』に『メガトンヘッド』のパワーが乗せられたシュート。それでも、ゴールは破れなかった。
鬼「グランに渡すな!」
「分かった!」
鬼道の指示は早かった。確かに、あんなシュートをまた打たれたらひとたまりもない。
グ「いいのか?俺にマークを集中させて」
円「俺は皆を信じている!」
グ「信じられるのは自分の力だけ。俺達ジェネシスは、個人個人が最強を目指す」
ウ「グランだけだと思うな!」
「『荒』…、くそっ!」
木「速すぎる!」
あたしも夕弥も、必殺技を出す間もなく抜かれてしまった。
ウルビダがパスを出した先には、守兄ぃと鬼道を振り切り、ボールに向かって跳躍した、
鬼「しまった!」
グランがいた。
.