荒波少女

□第33話 ついに来た!エイリア学園!!
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「えっと……え?あたし隠し事なんかしてないってば。あ、一朗太のことならもう」

円「そうじゃない」

「…」

円「美波はエイリア学園のことで、何か隠してる。…そうだよな」

「っ……」



疑問じゃなくて、確信を持った肯定的な言い方。そもそも、双子の兄にずっと隠しておけるなんて思ってなかったけど、



――今は言わなくていい。言いたくなったらに言えばいいから。



あれは一朗太のことだけじゃなくて、あたしがずっと隠してたことも指してたんだ。…いつからバレてたんだろう。


…言いたくなったら言えばいいからって、言ってたじゃん。…まあ話すことから逃げてたのは、あたしだけど。



リ「ちょっと待ちい円堂!」

夏「私達にも分かるように、説明して頂戴」

円「美波が言えば分かる事だ」



なっちゃんが言っても、守兄ぃは頑としてあたしに視線を向けたまま。怖くなって逸らしたけど、追い打ちように鬼道が口を開く。



鬼「俺も円堂に同意だ」

土「鬼道?」

鬼「鉄塔でグランについて訊いた時、歯切れが悪かったな。あの時俺は、言いたくなった時に言えばいいと言った。


だが、いつまでも待つ程、俺は甘くはないぞ。グランや監督のことで、何か知っているんだろう?」



――…何を隠しているかは分からないが、言いたくなった時に言えばいい。



「っはは……」



そうだよね。なんてったって鬼道だもん。鬼道じゃなくても、敵のことを仲間が知ってるなんて聞いたら、ね。


…ほら。あたしにも疑惑の目が向き始めた。今まで一緒に、戦ってきたのに。



「…監督の言う通り、エイリア学園はただの宇宙人じゃないよ」

『!』

綱「お、おい…」

一「じゃあ、何なんだ」

「それは…言えない」

一「…なんだよ、結局美波もそれか!」

秋「一之瀬君!」

一「皆もそうは思わないのか!俺達が知らない事を、美波は知ってたんだぞ!」



ついに感情を爆発させた一之瀬が、そう怒鳴った。



春「一緒に過ごしてきたのに、そんな言い方ないじゃないですか!」

一「一緒に過ごしてきたからだ!…言わなかったってことは、俺達は信頼されてなかったってことだろ」



春ちゃんの言葉に対してそう吐き捨てた一之瀬に、今度は塔子が怒鳴り返す。



塔「そこまで言うことないだろ!エイリア学園はサッカーを破壊に使ってるんだ。サッカーが大好きな美波が、よく思う訳がない。


あたし達に黙ってたのだって、何か理由があったに決まってるよ!そんなキツイ言い方しか出来ないのかよ!」



ああ、ダメだ。



木「…でもさ、理由ってなんだよ。ちょっとくらい相談してくれたっていいじゃん」

立「そうかもしれないけど、相談しないんじゃなくて、出来なかったんじゃ…」

目「確かに、立向居君の言うことも一理ありますね。豪炎寺君という前例もありますし」

壁「それでも、俺達に言って欲しかったッス…仲間じゃないッスか…」



止めてよ。あたしなんかのことで、喧嘩しないでよ。



綱「わけわかんねーけどよ、言っちまった方が楽なんじゃねーの?」

春「言えたなら、美波先輩はもうとっくに言ってますよ!」

鬼「落ち着け、春奈」

春「でも、」


円「皆いい加減にしろ!!!」



リュウジ風に言えば、鶴の一声。守兄ぃのそれは、まさしくそれだった。



円「美波が絶対に言えないなら、今はもうそれでいい。今は仲間同士で喧嘩してる場合じゃないんだ。それくらい、ちょっと考えれば分かるだろ?


エイリア学園に何が隠されてるのか、美波が何を隠してたのか。…そんなの関係ない。


最後まで地上最強のチームとして戦って、勝ちたいっていう気持ちがある奴だけが、富士山に行けばいい。俺達は、勝たなきゃならないんだ」



珍しいな。今度は守兄ぃまで、そんなキツイこというんだ。



円「上手く言えないけど、エイリアの奴らは皆苦しんでると思うんだ」

豪「…円堂」

円「だってあんなに強いんだぜ?ならサッカーだって楽しいと思うんだ。なのに、あんなことしてる。


俺は、ヒロト達にサッカーの楽しさを知って欲しい。サッカーは楽しいものなんだって、教えてやりたいんだ。


もちろん、エイリア学園の秘密とか、美波のことも知りたい。知った上で、受け止めたい」



もう、限界だった。



吹「美波ちゃん!」



しろ君の声も聞かないで、あたしはその場から逃げ出した。








円「…俺、皆を信じてるから」



自分と秋、夏未しかいない雷門中で、心配そうな2人に、そして自分に言い聞かせるかのように、円堂は言った。



夏「…円堂君が言うのだから、間違いないのだろうけど…いつからあの子が隠し事をしているのに気づいていたの?」

円「北海道に行く前、かな」

秋「そんなに前から!」



思わず声を張り上げた秋に、申し訳なさそうに眉を下げながら、円堂は静かに言った。



円「いつもなら、その時点で聞いてた。でも、今回は聞いちゃいけない気がした。だから、美波から言って欲しかった」



言い過ぎたな。と寂しげに呟いた円堂の横顔は、チームのキャプテンではなく、1人の兄であった。




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