荒波少女
□第33話 ついに来た!エイリア学園!!
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病院から雷門中に戻ると、校門前にいた秋と春ちゃんが駆け寄ってきた。2人共焦ってるみたいだけど…何かあったのかな?
秋「円堂君!」
春「キャプテン!」
円「どうした?」
秋「ジェネシスのグランが来たの!」
円「何!?」
「えっ………」
背筋が凍った。ひゅうひゅうと風の音が聞こえて、体温が下がってくように感じる。
ヒロトが来た?雷門中に?何で、どうして、何の為に…?
秋「瞳子監督を、姉さんって呼んでたの!」
「っ!」
円「姉さんだって!?」
吹「!」
それは秋達が瞳子さんとヒロトが話している場所に居合わせて、聞いてしまったということだろうか。
だとしたら、ヒロトは秋達が見ているのに気づいてて、皆を動揺させる為にわざと言ったとか…。
吹「とにかく、皆と合流しよう!」
円「ああ!」
春「…?美波さん!行きますよ!」
「う、うん…」
敷地内に入って見渡すと、なっちゃんを先頭に瞳子さんと対峙している皆がいた。
リ「円堂!コイツ、スパイやスパイ!そうに決まっとる!」
円「スパイ?」
違う。
土「そういうことか…。監督が時々いなくなっていたのは、エイリア学園と連絡を取るためだったのかもしれないな…」
綱「なあなあ。敵に姉さんって呼ばれたってことはさ」
木「監督は宇宙人?」
違うよ、皆。本当はその逆で、何も話せないのは、瞳子さんのお父さんが……。
円「待て、皆。俺が話す。本当に、アイツの姉さんなんですか?」
瞳「……確かに、私は隠していることがある。でももう少し待って欲しいの。エイリア学園は、ただの宇宙人ではないわ」
ただの宇宙人ではない。その言葉に、皆が疑惑の目を向ける。まさか、言う気なんじゃ……。
「あたしも……」
覚悟しなきゃ、いけないんだ。
瞳「皆には、私と一緒に富士山麓に行って欲しいの。そこで全て話すわ」
塔「何で富士山なんですか?」
鬼「そこに宇宙人がいる…」
『!』
瞳「出発は、明日の朝8時。それまでに準備を整えておいて」
そう言って、瞳子さんは踵を返し、どこかに行ってしまった。
恐る恐る皆の顔を伺えば、疑い、嫌悪、苛立ちの募った表情をしていた。特にそれが顕著だった一之瀬が、口を開く。
一「結局監督は、俺達の質問には何も答えなかった…」
リ「ダーリン…」
一「俺だって、今度の戦いには疑問がいっぱいあった。
それでも着いて来たのは、エイリア学園の攻撃で傷ついた、皆の思いに答えたかったからだ」
「今日のカオス戦だって、アフロディが倒れている」と、一之瀬は悔しげに唇を噛む。
一「だけど監督には、俺達の思いなんか何にも届いてない…。俺はこんな気持ちじゃ、富士山になんか行けない」
土門も吐き捨てるように我慢の限界だと言ってから、鬼道に話を振った。
鬼道は「どっちに転ぶにしても判断材料が少なすぎる」と冷静に返すも、それで皆が納得したわけじゃない。
円「悩むことなんかない。エイリア学園の全てが分かるんだぜ。行くしかないだろ。
監督が勝つことに拘って俺達を引っ張ってきたのは、きっと訳があると思ってた。その答えは富士山にあるんだよ!行こうぜ、皆!」
いつもと同じ、守兄ぃの鼓舞。それでも、皆はなんともいえない表情をしていた。
鬼「待て円堂。俺は一之瀬が戸惑うのもわかる。一緒に行くかどうかは、それぞれに決めてもらおう」
円「だけど…!」
鬼「みんなには考える時間は必要だ」
円「…そうか、そうだな。今夜一晩あるもんな」
一「どんなに時間を貰っても、答えは同じだよ」
円「一之瀬」
一「俺は降りる」
きっぱりと言った一之瀬に、苦しさが込み上げてくる。だって瞳子さんは、今まで一生懸命だったのに。
綱「何で監督は話さないんだ?黙ってたっていいことないだろ」
木「…結局、信じた俺達がバカだった、ってことでしょ…」
夏「本当にそうかしら。今までの試合を思い出して。監督の采配は、いつも私達の勝利を考えた的確なものばかりだったわ。
本当に信用する価値はないのかしら?」
土「そりゃあそうだけど…」
夏「豪炎寺君の時も、憎まれ役になってでも豪炎寺君にチームを離れるように言ったのは、彼と彼の妹さんを守る為だったでしょう?」
豪「…そうだな、俺は監督も信じる」
吹「僕も行くよ。行くしかないんだ。こんな所で、立ち止まりたくない」
塔子が本当のことを知りたいと言うけど、壁山は不安そうだし、土門もそっぽを向くだけだ。
どうしよう。もし皆が、明日来なかったら。あたしだけで戦うなんて、出来ないよ。
鬼「みんな頭を冷やそう。俺も考える」
鬼道が背を向けて、皆も帰ろうと歩き出す。……待って、待ってよ。
「…ね、ほら、信じてみようよ!降りる降りないは、富士山に行ってから決めればいいよ!
きっと瞳子監督には、何か言えない理由があるんだって!だからさ、行こう!皆で富士山にさ!」
リ「美波…」
円「…なあ、美波」
「何、守兄ぃ?」
円「美波は、俺達に何を隠してるんだ?」
鋭利な刃物で後ろから貫かれたような、…そんな感覚がした。
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