荒波少女

□第31話 奇跡のチーム!ザ・カオス!!
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ぼんやりとしながら暗くなってきた道を歩いて、キャラバンに向かう。


家に帰って、シャワー浴びて、着替えて、色々した筈なのに、なんだか記憶が曖昧だ。


一朗太が言い放った言葉が、頭がを離れない。






風「俺はずっとが円堂が羨ましかった。…俺には無いものを沢山持っていて、羨ましかった…。


そんなことはない?…何の根拠もないこと言うなよ。なら聞く。


何で俺はキャラバンを降りたんだ?何で栗松は降りたんだ?何で半田達は入院してるんだ?


強くないから。力がないから。そうだろ?だから負けるし、怪我をするし、逃げたくもなる。


強大な力の前に、誰もが恐怖の感情を押さえられる訳がない。俺もその1人だった。それだけだ。


俺は自分じゃ無理なんだって理解して、見切りをつけただけだ」

「だからっ…諦めたら、」

風「諦めなかったところで何になる?」

「っ…」

風「勝てるかも分からない、終わりすら見えない戦いだ。それに、諦めずに努力したところで結果が出なければ意味がない。


…一度、円堂に言ったことがあるんだ。世界を守る為なら、神のアクアを使ってもいいんじゃないかって。


もちろん否定されたさ。でも、それは強い奴だからこそ言えることだ。何の支えも無しに弱い奴がどうやって戦い続ければいい?」

「いち、ろうた…」

風「分かっただろ?もう俺には美波とボールを蹴る資格なんてない。


………帰ってくれ」






胸がずきずきと傷んだ。苦しくて、涙が出そうになって、我慢して、一朗太の家を飛び出して、無我夢中で走った。


理解なんてこれっぽっちも出来てなかったんだって、思い知らされた。


キャラバンの止まっている雷門中が見えてきて、立ち止まる。校舎は半分以上直ってきてる。


一足先に整備されているグラウンドを見て思い出したのは、日本一を目指して頑張った日々。


一朗太は一番に助っ人になってくれて、ディフェンスの要で、隣であたしを引っ張ってくれてた。


なのに、



「(全然分かってなかったんだっ…!)」



どれだけ悩んでたのか、苦しんでたのか、辛い思いをしてきたのか、分かってなかった。


あたしだって、一朗太がいう程出来た人間じゃない。…けど、もっと何かしてあげられることはあったかもしれない。


やっぱり、幼なじみ失格だ。


ぼんやりと空を見上げれば、星がちらほら見えた。そういえば、戻ってきてからはほとんど見てなかったな。


ヒロトは、今頃何してるのかな。サッカー、やってるのかな…。


最初はただ単純に、エイリア学園を倒してまた皆で楽しくサッカーをやりたいって思ってた。


ヒロト達のことを思い出してからは、助けてあげたいって思った。


しろ君とアツヤのことを知って、支えてあげなきゃダメなんだって思ってた。



「欲張りだなあ…」



誰にも言わないで、何でもかんでも全部1人やろうとしちゃってさ。そんなの、出来っこない癖に。


でも、たとえ皆を裏切るような行為になってしまったとしても、やっぱり言えないや…。



なかなか学校内に入る気分になれなくて、そのままそこで立ってたら、アフロディが顔を出した。



「あ、アフロディ」

ア「やっと来たね。円堂君が心配していたよ」

「はは…ごめん…」

ア「…」



苦笑をしていたアフロディだけど、あたしをじっと見つめた後、すっとその笑みを消した。



ア「何かあったのかい?」

「え、何かって」

ア「悩んでいるように見えたからね」

「そんなことないって」

ア「本当に?」

「…根拠は」

ア「そうだな……今、無理して笑っているよね」



疑問ではなく、肯定。そう言われて、唇を噛み締めた。ダメだ、バレてた。



「流石はアフロディだね」

ア「僕でなくとも分かるよ」

「…あのさ、ちょっと聞いていい?」

ア「なんだい?」

「もし、自分がすっごい信頼してる大切な人のことを、ちゃんと分かってあげられなくて傷つけて、酷いこと言われたらどうする?」



思いきってそう言うと、アフロディは手を顎に当てて考え込むような仕草をしてから、口を開いた。



ア「…謝る、かな」

「…拒絶されるかもしれないよ」

ア「たとえそうなっとしても、何かしら行動しなければそれまでだ。何も変わらない。


大切に思い合っているなら、相手側にも罪悪感は少なからずあるだろうし、互いに謝り合うきっかけを作らなければね」

「………うん、そうだね。ありがとう、アフロディ」



また今度話そう。今度はちゃんと顔を見て、謝るんだ。今はとりあえず、心配してる守兄ぃのとこに行かないと。




歩き出した美波の背中を見て、アフロディは小さく息を吐いた。


自分が意見を言う前と後を比べると顔つきが違っていて、なんとか出来たのだろうかと思う。


それでもどこか影が射しているその表情に、アフロディは一抹の不安を覚えた。



ア「(信頼していて、大切…。美波、君が言っていたのはもしかして、風丸君……?)」





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