荒波少女

□第29話 円堂・新たなる挑戦!
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特に話題も思い付かなかったから、黙って手を引きながら歩く。


そもそも雷門中の裏門から出れば、稲妻総合病院は歩いてすぐそこにあるっていうね。


近いから便利だ。ただたまにすれ違う豪炎寺のお父さんは、あたしはちょっと苦手だったり。


会釈しても無視されるし…あまりよくは思われていないみたいだ。



「入ろっか」

吹「うん」



受付で聞くと、どうやら染岡は半田達と一緒の病室らしかった。まずあたしだけ顔を出して、染岡を呼ぶ。



「おひさー、皆の衆」

半「なんなんだよそのキャラ…」

「なんかノリだよノリ。染岡、しろ君が染岡と話したいんだって」

染「吹雪がか?分かった」



染岡は松葉杖で立ち上がると、廊下で待っているしろ君に屋上へ行こうと声をかけた。


多分、染岡なりに気を使ったんだと思う。しろ君は今不安定だし、その気遣いは凄く助かる。



マ「何かお土産とかないの?」

「そこ聞く?」

マ「当たり前でしょ」

「あたしが怪我せずに帰ってきたことと、お土産話ってことで」

マ「却下」

「酷くないですか」

宍「俺沖縄について聞きたいです!」

少「キャプテンのお祖父さんがいたっていう陽花戸中ってどんなところだったんですか?」

半「アフロディがチームに入って本当か?」

「見てよマックス、このいい後輩達を」

半「俺は無視か」



だって半田ですから。沖縄に陽花戸の話かあ。大海原のことと、立向居のことと、それから、



「…」




――サッカー、やろうよ


――…ごめんな




ジェネシスとの試合を思い出した。ヒロトに…グランに負けて、しろ君が倒れて、一朗太が離脱した。


あの日のことは、昨日のように思い出せる。いや、今までのこと全てがだ。それほどまでに、大変な戦いだった。


ガゼルとは引き分けたけど、軽くナメられてた気がするし、正直負けなかったのは凄いと思う。次戦う時は勝てるかどうか。


バーンだってグランやガゼルにひけを取らない。あのシュートを防ぐのは、簡単に出来ることじゃない。


だから勝つために毎日練習してるけど、やっぱり戦う以外ないのかと考えるとどうしても気が引ける。


だけど日本中の人達にとってヒロト達は倒すべき敵で、その思いを背負ってる雷門にとっても敵。


もし会わなかったら、あんなことで家出なんかしなかったら、勝つために練習に打ち込めたのかなあ。


でも入院することになった半田達のことを考えると、許せるのかと問われたら、言葉に詰まる。


というかそういうのは結局のところ半田達がどう思うのかの問題だけど。



影「円堂さん?」

「うぇっ!?どしたの、影野」

影「さっきから黙ってたから…」

「いやあ…あはは。で、アフロディだっけ?うん、チームに入ったんだ。大丈夫、力になってくれてるから」

半「寧ろ美波が大丈夫じゃなさそうなんだけど。顔色悪いぞ?」

マ「美波はギャーギャー騒いでた方がいいよ」

少「どうかしたんですか?」

宍「俺達に出来ることならなんでも言ってください!」

「皆…」



そう言ってくれるのは凄く嬉しい。いいチームメートを持ったなって思う。けど、


エイリア学園を許せる?なんて、そんなこと聞けないや。



「ううん、大丈夫だって」

半「とか言って溜め込むだろ」

「えー…」

半「チームメート以前に友達だろ?つかそういうやつだってとっくに分かってるんだからな」

「半田…無理して格好つけなくても…」

マ「普段しないことすると違和感あるよね」

半「だああああ!とにかく俺がいいたいのはだな!溜め込むな!」

「はいはいっと」



ありがとう、皆。





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