荒波少女
□第29話 円堂・新たなる挑戦!
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とりあえず、一度雷門中へ戻ることになった。
キャラバン内では守兄ぃが立向居に色々と説明してたり…うわ、夕弥が寝てる目金の顔に落書きしてる。
怒って追いかけ回されても、あたしはフォローしないからねー。
「壁山ー!お菓子ちょっと分けて!」
壁「はいッス!」
塔「はいよっと」
「中継ありがと、塔子。あ、アフロディもいる?」
ア「いいのかい?」
「もっちろん!いいよね?」
綱「おう!前に何あったかは知んねえけど、今は仲間だからな!」
ア「…ありがとう」
そう言いながら笑ったアフロディは、とても嬉しそうだった。
あの決勝の時は、まさかこうやってアフロディと一緒にプレーすることになるなんて、思いもしなかった。
それこそヒロト達と戦うことになるとも思わなかった。どんな思いで、どんな気持ちで、ヒロト達はサッカーをやってるんだろう。
サッカーが大好きなのにあんなことをするなんて、辛いし苦しいんだろうな。
ア「どうかしたのかい?」
「へっ、ああ、うん。ちょっとした考え事だよ」
ア「エイリア学園のこと?」
「…うん。何であんなことするのかなって」
ア「そうだね…。…僕も君達に酷いことをしてしまった」
人間が神になれるはずないのにね、とアフロディは自嘲するかのように笑った。
「…アフロディは強いと思うよ」
ア「え?」
「自分の弱いとこ全部を受け入れて、強くなろうって頑張って、自分を負かしたチームに協力してるんだから」
ア「…ふふ、美波らしいね。あんなに僕に対して冷たかったのに」
「だーかーらー!昔は昔で今は今なんだよ!アフロディはサッカー好きなんでしょ?ならもういいじゃん!」
結局アフロディだって影山に利用されてただけで、サッカーが大好きなんだ。
影山に利用されてたといえば、明王ちゃんだ。潜水艦からは脱出しただろうけど、今頃何してんだろ。
まあ、サッカーを続けていればまた会えるとは思いたい。
そうこうしている内に雷門中について、監督があたし達を見渡した。
瞳「皆、明日からは新しい体制で練習よ」
『おーっ!』
円「それじゃあ、みんなうちに来い!みんな纏めて泊まってくれ!」
綱「おおっ!太っ腹!世話になるぜ!」
「なんか賑やかになりそうだね!ね、しろ君!」
吹「!、…うん、そうだね」
寂しそうにどこか遠くを見ているようなしろ君が心配になって、声をかける。
そんなしろ君は豪炎寺を一瞥して、少し俯いていた。…元気づけられたらいいんだけど。
それに気づいたのかどうかは分からないけど、条兄ぃが荷物を渡して早く来いと声をかけていた。
とりあえずあたしもキャラバンを降りて体を伸ばす。今日はゆっくり休まないとな。
吹「…美波ちゃん」
「ん?」
吹「染岡君が入院してる病院を教えて欲しいんだ。…少し話したいから」
「分かった」
弱々しく微笑んだしろ君を尻目に、あたしは声をあげて手を振った。
「守兄ぃ!ちょっと稲妻総合病院にしろ君と行ってくる!」
円「おう!気をつけろよ!半田達にもよろしくな!」
「うん!じゃあ行こっか」
しろ君の手を握って、2人で歩き出した。
円「手を繋いで行くとか俺に喧嘩売ってるんだよなそうだよな」
綱「?、いいんじゃねえの?仲いいのはいいことだろ」
円「…」
一「え、円堂…。吹雪は、ほら…さ…」
土「とばっちりくらいたくないし、ほっとこうぜ…」
鬼「それが賢明だろうな…」
壁「キャプテンが怖いッス…」
木「いつものことじゃんあんなの」
リ「ホントシスコンやなあ」
塔「どうにかなんないのかよ、アレ…」
ア「…苦労しているんだね」
残された彼らがこんな話をしていることは、もちろんだが2人が知らないことである。
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