荒波少女
□第29話 円堂・新たなる挑戦!
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守兄ぃがキーパーを止める。確かにフィールドプレーヤーだったらと思ったことはある。
けど、ポジションを変えるなんてそんなこと考えたこともなかった。雷門のキーパーはずっと守兄ぃだったから。
円「そんな…、急にそんなこと言われても…!」
塔「あたしは反対です、監督!このチームのキーパーは円堂しかいません!」
綱「ああ、だよな。無茶苦茶だろ」
一「どういうつもりでそんなことを言うんですか!」
顔をしかめた皆が監督に抗議する。そりゃあたしだって、守兄ぃがキーパーを止めるなんて抵抗くらいある。
でも瞳子監督が意味のないことを言うとも思えないし、さっきの試合のことだってある。
攻撃で連携技を打つ度に、守兄ぃがゴールを空けるのにはリスクが高すぎる。そう簡単に止められるような相手でもないし…。
「鬼道はどう思う?」
鬼「俺は監督に賛成だ」
冷静に放たれた言葉に、皆がギョッとした表情をした。視線が集中する中、鬼道が口を開く。
鬼「俺達は地上最強のサッカーチームにならなければならない。
お前が必殺シュートのために前へ出ることが、相手に得点のチャンスを与えてしまうのなら、それは大きな弱点。
弱点は克服しなければならない。そこで初めて、俺達は完璧な地上最強のチームを名乗ることが出来る」
「弱点を克服する為に守兄ぃはキーパーを止めるってこと?」
鬼「そうだ。円堂、お前はリベロになるんだ」
円「リベロ?」
瞳「鬼道君も、同じことを考えていたのね」
鬼「エイリア学園に勝つために、俺達はもっと大胆に変わらなくてはいけないんじゃないか。その鍵になるのが、円堂じゃないのか」
円「ペナルティエリア外の、あのプレーか」
ガゼルのシュートを弾いた、土壇場で咄嗟に出たあの未完成の必殺技を思い出す。
あれならシュートにもディフェンスにも使える必殺技になると思う。
鬼「あの技をマスターすれば、お前は攻守に優れたリベロになる」
円「リベロ…」
「守兄ぃ…」
鬼道に目を向けられた守兄ぃは、当たり前だけど困惑してた。だってずっとキーパーをやってきたんだ。
じいちゃんのノートを元に特訓して実力つけて、今までそれで頑張ってきた。
あたしは一番近くで特訓を見てたし、あたし自身も何度かやってるから、どれだけ努力したか分かってる。
というかさ、今更だけど、
「リベロって何?聞いたことあるような気もするけど」
綱「おー、そうだ。俺もそう思ってた!リベロって何だ?」
目「リベロっていうのはイタリア語で自由という意味で、ディフェンダーとして動きながらも前に出て攻撃もするプレーヤーのことですよ」
ア「要するに、美波みたいなプレーヤーのことだよ」
「あたし?」
豪「美波は主にディフェンダーだが、シュートを打ちに上がることもあるだろう?」
「ああ!成る程!」
円「…決めた!」
考え込んでいた守兄ぃがそう声をあげた。
円「俺、やるよ。勝つために、強くなるために、リベロになる!」
豪「リベロ円堂か…面白いじゃないか」
「ね!面白そう!」
吃驚した壁山がトイレに全力で走ってった。壁山は弱小サッカー部だった頃から、キーパーの守兄ぃを見てるもんね。
皆で盛り上がってたら、夕弥が誰がゴールを守るのかと言った。皆も考えてるけど、考える必要なんてない。
「そんな悩む必要なんてないよ!ね、守兄ぃ!立向居がいるんだから!」
円「ああそうだ!立向居がいる!」
立「俺、ですか?」
円「俺さ、上手くいえないけど立向居から可能性を感じるんだ。なんか物凄い奴になる!そんな感じがするんだよな!
こいつに任せておけば、大丈夫だって思うんだ」
立「でも、俺…、俺が雷門のゴールを守るんですか?」
「大丈夫!確かに経験は少ないけど、それはその分延びしろがまだまだあるってことだからね」
鬼道も守兄ぃの後継者には相応しいと後押しするように言ってくれた。
立向居は映像を見て『ゴッドハンド』を身につけて、『マジン・ザ・ハンド』マスターしてる。
保証なんてどこにもないけど、きっと大丈夫だって思える。
円「なっ、俺達のゴールを守ってくれ!」
立「!、はい!やります!」
一「頑張れよ、立向居」
綱「おもしれえじゃねえか!立向居はキーパーになりゃ、このチームもっと強くなるんだろ!
だったらどこまでも強くなってやろうじゃねえか!」
立「俺、頑張ります!よろしくお願いします!」
…なんかガチガチだよ、立向居。
「緊張し過ぎじゃない?」
リ「アンタもトイレ行ってきたらいいんちゃう?」
立「さっき行ってきました!」
…いつの間に行ってきたんだろう。あとリカ、あんまりからかわない方がいいよ。
目「円堂君のリベロ、アフロディ君のフォワード、立向居君のキーパー。まさに、超攻撃型雷門イレブンの誕生です!」
「超攻撃型の雷門イレブン、か…!」
新しい雷門イレブン。一体どんなチームになるんだろう。
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