荒波少女

□第20話 キャプテンの試練!
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ガラッ



「しろ君…」



しろ君が気になったあたしは、病院のしろ君の病室に来ていた。



昨日から昏睡状態で、まだ目覚めてないらしい。



あんな強力なシュートをくらった訳だし、今までも相当無理してたから…。



「…ごめんね、支えてあげられなくて………」



知ってたのに。しろ君の中にはアツヤの人格があるんだって、知ってたのに。



また、涙が出てきた。擦って無理矢理止める。



「早く起きてね、しろ君」



手を握ると、ひんやりとしていた。



…なんだろ。今になって疲れがドッと出てきたというか、眠くなってきた。



捻挫は軽かったものの、あまりボールは蹴るなって鬼道に言われたから、今日はベンチで練習を見ていた。



捻挫しなかった右足でリフティングしながら、今までの試合の映像見っぱなしだったし…目が疲れたのかな?



鬼道も今まで無理をしていたんだから、これを期に少し休めって言ってたし…。



ちょっとだけ、ここで寝させてもらおう。




***


吹雪side

吹「アツヤじゃない…、僕は、吹雪士郎だ!…っ!」



目が覚めると、僕は白い部屋にいた。グランのシュートを受けてからの記憶がない。



多分僕は気を失ってしまって、病院に運ばれたんだと思う。



怖い夢を見た。僕が、アツヤにのみ込まれてしまって、僕という存在が消えてしまう夢だった。



士郎はシュートを決められなかった。



僕は…、もういらない?



吹「や、だ…そんなの、いやだよ………」

「む…ん……、しろ、くん…」

吹「美波、ちゃん?」



ベッドに突っ伏すように寝ている美波ちゃん。その寝顔を見て、少しだけ落ち着いた。



繋がれた手から、美波ちゃんの温もりが伝わってくる。側に、いてくれてる。



目元に涙の痕があった。僕のために泣いてくれたのかと考えると、嬉しさが込み上げてくる。僕を、士郎を、見てくれてる。



顔を寄せて、前髪を少し掻き分けて額に軽くキスを落とす。円堂君も風丸君もここにはいないし、これくらいならいいよね。



優しく、ゆっくりと髪を梳く。さらさらしてる。綺麗だなあ。



―――あたしが居場所になるから!



大丈夫。美波ちゃんは僕を必要としてくれる。居場所になってくれる。絶対に、大丈夫。



だから、だから、



「いちろうた…」

吹「!、っ………」



溢れたのは幼なじみである風丸君の名前。



ああ、やっぱり、



美波ちゃんにとって、僕より風丸君のことが必要?



やだよ、そんなのいやだ。美波ちゃん、僕を見てよ………。








ふらりと立ち上がり、吹雪は病室を出ていく。




戻ってきた彼の瞳は金色であった。




吹「オレが美波と完璧になるんだ。だから寝てろよ、士郎」




士郎…否、アツヤは、乱暴に美波の髪をかき回し、ニヤリと笑った。





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