荒波少女
□第17話 じいちゃんの究極奥義!
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「じいちゃんのもう1つのノートを手にいれるぞ!」
『おー!』
と、いうわけで今あたし達は福岡の陽花戸中に向かっている。じいちゃんって中学は陽花戸だったのかな。
思えば、じいちゃんの事はサッカー選手で雷門の監督をしてた事以外あんまり知らない。お母さんもあまり話したそうじゃなかったから、聞けなかった。
ちなみにリカもキャラバンに乗っている。リカが言うには一之瀬と一心同体なんだってさ。
「よく分かんないけど頑張れ一之瀬!」
「はは……」
リカにくっつかれてる一之瀬は苦笑いだ。
そうこうしてるうちに、どことなく懐かしい雰囲気の福岡市街地を通り過ぎて、陽花戸中についた。
出迎えてくれた校長先生が言うには、やっぱりじいちゃんは陽花戸出身で、校長と大親友だったらしい。
ノートは校長室で保管されていて、守兄となっちゃん、瞳子監督で取りに行くことになった。
「美波は行かなくてよかったのか?」
「あんまり大人数で行ってもなあって思ってさ。それにノートは貰ったらいつでも見れるし」
じいちゃんのもう1つのノートか……。どんなことが書いてあるのかな。
「美波ちゃんのお祖父さんってどんな人だったの?」
「伝説の天才キーパーって言われるくらいの凄いキーパーだったんだって!」
「へー!じゃあ円堂がキーパーやってるのもその影響?」
「うん!それに、ゴッドハンドやマジン・ザ・ハンド、イナズマ落としはじいちゃんのノートに書いてあったんだよ」
「円堂と美波以外には読めない字で書かれてるノートだけどな……」
「そんなに読めないノートなん?」
「ああ。恐ろしく汚い字だ」
「……キャプテンも美波ちゃんも凄いね」
「はは……」
守兄も同じくらい汚いんだけどね……。全体的に守兄と字が似てるから、あたしも読めたんだと思う。
あれを見て自分は人が読める字を書くようにしようと思ったんだっけな。
話が終って、陽花戸のサッカー部を紹介してもらうことになった。陽花戸中キャプテンの戸田が言うには、皆雷門のファンならしい。
白恋の時もそうだけど、こうしてファンだと言ってもらえると、日本一になった実感が湧くしちょっと照れる。
「おい立向居!円堂くんだぞ!どうしたんだ!円堂さんに会えたら俺感激ですとか言ってたのに」
「は、はい!」
そう返事して、後ろから1年生っぽい子が出てきた。手と足が同時に出ていて動きがカチコチだ。
「え、え、円堂、さん!お、俺、陽花戸中1年、立向居勇気です!」
「よろしくな!」
「あ、握手してくれるんですか!?」
「もちろんさ!」
「円堂さん!」
そう言って守兄の手をぶんぶんと振る立向居。面白い子だなー。
「感激です!俺もうこの手一生洗いません!」
「いや、ご飯の前には洗った方がいいぞ?」
「ですよね!」
「「あははははは!!!」」
……ご飯の前じゃなくても洗った方がいいと思うんだけど。
サッカーが大好きだと言う立向居は、元々ミッドフィルダーだったのを、守兄に憧れてゴールキーパーに転向したそうだ。
立向居には守兄に見てもらいたいキーパー技があるらしい。という訳で実際にやってもらうことになった。
「それじゃあいくよ!」
「お願いします!」
軽く助走をつけた一之瀬が、手加減無しのシュートが放つ。少し腰を落とした立向居が構えた。あれは……まさか!
「ゴッドハンド!」
立向居が繰り出したのはなんとゴッドハンドだった。色は守兄やあたしと違って青だけど、あれは紛れもなくゴッドハンドだ。
「ゴッドハンドだ!凄いよ立向居!お前、やるじゃないか!」
「あ、ありがとうございます!」
「でも、どうやって……」
戸田曰く、映像を見て死ぬほど練習したらしい。よっぽど練習したんだなあ……。
凄い才能だと鬼道も驚いてる。木暮やリカが不思議そうに首を傾げているのを見て、一郎太が説明した。
「円堂はゴッドハンドを身に付けるために、それこそ血の滲むような特訓をしたんだ」
タイヤと向かい合う守兄を思い出す。あの帝国との試合の為にした猛特訓、懐かしいや。
立向居のグローブはボロボロで、手には肉刺が出来ている。
雷門が注目されるようになってから、まだそこまで日は経ってない。
なのにここまで実力をつけるなんて、本人は謙遜してるけど、努力家で凄い才能を秘めてる奴だ。
守兄と立向居が構える。二人がゴッドハンドをぶつけあうと、凄い爆風と砂埃が起きた。
「凄いよ立向居!お前のゴッドハンドは本物だ!」
「うんうん!あたしも頑張らなきゃなって思うよ!」
「あ、ありがとうございます!えっと、円堂さん……あれ?」
「あたしのことは美波でいいよ。ややこしいでしょ」
「分かりました!円堂さん!美波さん!俺、もっともっと強くなります!」
「ああ。そのためにはもっともっと特訓だ!」
「はい!」
そして陽花戸中と合同練習をすることになった。
最近はチーム全体に、エイリア学園を倒さなきゃっていう使命感っぽいのがあったからか、皆も楽しそうだ。
あたしだって、エイリア学園を倒したい。そして、ヒロト達を救いたい。……ヒロト達がそれを望んでいるのかは、分からないけど。
半田達の敵討ちをしたくて、リュウジに助けてと言われて、ここまでやってきた。でも、風介は……。
「美波!」
「え?うぶっ」
一郎太の声に顔を上げたら、視界いっぱいに白と黒が広がった。サッカーボールだ。痛い。尻もちをついた。お尻も痛い。
「ったく、考え事か?」
「あはは……バレたか。流石は一郎太だ」
駆けてきてくれた一郎太が苦笑いで手を貸してくれた。いつもそうだ。何かあると、一郎太は直ぐ助けてくれる。
「ヒーローみたいだよね」
「何が?」
「なんでもない」
あ、守兄の顔にボールが。守兄も考え事してたみたいだ。じいちゃんのノートの事かな……。
「……本当、そっくりだよ。お前らは」
そして戸田の提案で、明日は練習試合をすることになった。楽しみだ!
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