荒波少女

□第7話 エースストライカーは誰だ!!
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朝、目が覚めたらとても寒かった。



「寒…」



そういえば昨日北海道に着いて、白恋中に行ったんだっけ。そこでしろ君と再会して、色んな事を知ることになった。


テントから外に出れば、北海道の冷たい風が肌に当たる。うわ寒っ!


キャラバンの上に登って、寝転がって空を見る。雲1つない、綺麗な青空だ。



「アツヤ…」



運命は時に残酷だとか聞いたことがあるけど、まさにそれだ。雪崩がしろ君の両親とアツヤを奪ってしまったなんて。


そしてしろ君は"完璧"になるためにアツヤの人格を作り出した。2人で完璧になるという約束を果たすために。



「でもなあ…」



しろ君が作り出したわけだから、アツヤであってアツヤじゃない。しろ君はそれに気づいているんだろうか。



「うーん…」



アツヤの事を知ってるのはあたしだけだから、あたしがなんとかフォローしてあげないと…。


でもどうやって?しろ君の言ってる"完璧"になれるくらいあたしが強くなって、支えてあげればいいのかな。


そのためには、今考えてる必殺技を完成させたいな…。……何すればいいかわかんないや。



「あーもー」



体を起こせば、下に一朗太がいるのが見えた。



「一朗太?」

風「美波か。早いんだな」

「そういう一朗太こそ、早いね」



キャラバンの上に登ってくる一朗太。そしてあたしの隣に座った。



風「…吹雪と知り合いだったんだな」

「うん。北海道に旅行に行ったとき、迷子になってさ…。その時ホテルまで送ってくれたんだ」

風「そうだったのか…。なあ、美波」

「ん?」

風「えっと…」

「一朗太?」

風「…」

「おーい」

風「やっぱり今聞くのは…」

「言ってみてよ」

風「その…。##NAME2##っ、美波は好きな奴とかいるのか?」

「好きな人?」



なんだ。そんなことか。



「一朗太」

風「え!?」

「あと、守兄ぃと修也と鬼道と塔子と一之瀬と土門と半田にマックス、影野、少林、壁山、栗松、宍戸…、秋とか春ちゃんとかなっちゃんも!」

風「そっちか…」



はあ、とため息をつきながら頭を抱える一朗太。あれ、あたし何か悪い事でもしたかな…?



「一朗太ー」

風「いや、聞いた俺がバカだったんだ。美波はそういう奴だからな…。仕方ないよな…」

「おーい。どうしたの?」

風「…何でもない。長い付き合いだしわかってたさ、うん」



何でだろう。なんか失礼な事を考えられた気がする。






「ユニフォーム似合ってるよ、しろ君!」

吹「ありがとう、美波ちゃん」



そんなこんなで朝食が終わり練習に。今日からしろ君も参加するから凄い楽しみ!


2チームに分かれて試合形式の練習。あたしはしろ君と同じチームだった。あのスピードに追い付けるように頑張らないと!


で、いざ始まってみると…、



「お、追いつけない…」



速すぎて全然追いつけなかった。一朗太より速い。そんな気がした。



吹「風になろうよ」



一瞬にして一朗太からボールを奪ったしろ君は、アツヤに代わってどんどん突っ走っていく。


ていうか追いつく追いつかないの問題じゃない。連携が出来ての。白恋ではあれでよくても、雷門では…。



「ア…、しろ君!」

吹「なんだよ美波」

「えと」


染「ちょっと待った!」



何を言えばいいか分からなくて口ごもってたら、染岡が声をあげた。不機嫌そうな声。あ、なんかやばいかも。



染「お前な、一之瀬も鬼道もこっちに回せって言ってんだろうが!」

吹「でも僕、白恋ではいつもこうしてたし…」

染「白恋じゃそうでも、うちじゃそんなの通用しねえんだよ!お前は雷門イレブンに入ったんだ!俺達のやり方にあわせろ!」

吹「そんなこと急に言われても…。そういう汗くさいの疲れるなあ」

「ブフッ」

染「誰が臭いって!?つか美波笑ってんじゃねーよ!」

「あはは…、ごめん」



染岡はしろ君に、豪炎寺の代わりなんて無理なんだと言う。いや代わりって…。チームの雰囲気が悪い。どうしようかと考えていれば、



風「それはどうかな。俺は吹雪にあわせてみるよ」



一朗太が言った。染岡が突っかかったけど、そのまま淡々と続ける。



風「俺には、吹雪のあのスピードが必要なんだ。エイリア学園からボールを奪うには、あのスピードが無くちゃダメなんだ。…そうでなきゃ、また前の繰り返しだ」

「一朗太…」



一朗太の顔が暗い。前のエイリア学園との試合の事を思い出しているんだろう。ジェミニストームは速い。だから、それよりも速くなりたいんだ。



吹「だったら、風になればいいんだよ」

円「風?」

「どういう意味?」

吹「おいで、見せてあげるから」



そう言って歩いていくしろ君を、あたし達は追った。




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