荒波少女

□第6話 雪原の皇子!
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そしてしろ君の実力を見るために、雷門中対白恋中の練習試合をすることになった。

しろ君の実力を見る為の試合だからと、監督からの指示はなく好きにしていいとのこと。うん、楽しい試合になりそう。

それぞれがポジションにつく。白恋中のフォーメーションを見ると、しろ君はゴール前に立っていた。



「やっぱり吹雪はディフェンダーみたいだな」

「でも沢山噂が立つくらいだから、きっと得点力も本当なんだと思う」



にしてもだ。しろ君の噂が本当として、ならアツ君の噂を聞かないのは何故なのか。

あの時確かに言っていた。しろ君はディフェンダー、アツ君はフォワード。しろ君がボールを取って、アツ君がゴールを決める、完璧なコンビ。

それなら兄弟で凄い選手がいるって話になってもいいのに。あ、でもアツ君は二歳下だから今は同じチームになれないのか。だからかな?

ちなみに実況はお馴染み角馬だ。どうやって北海道まで来たんだろう。奈良の時といい、将棋部にしておくのがもったいない気がしてくる。


ホイッスルが鳴り響いて、白恋中との練習試合が始まった。鬼道からボールを受け取った染岡が、強引に上がっていく。

相当しろ君が気に食わないようで、その気持ちをぶつけるような荒っぽいプレイだ。対するしろ君は、そんな染岡ににこりと笑った。



「そういうの、嫌いじゃないよ。……アイスグランド!」



くるくると回転しながら跳躍したしろ君が、氷を呼び起こす。染岡は凍らされて、一瞬にしてボールを奪われてしまった。

凄い必殺技だ。動きも速ければ判断も早い。なんてとんでもないディフェンス力だろう。

しろ君はパスを出したけど、一郎太がカットした。白恋はしろ君の実力が突出してるだけで、他の選手達相手なら対処出来そうだ。

再び染岡にボールが渡る。それを見たしろ君が、ゴール前に立ち塞がった。



「止められるモンなら止めてみやがれ!ドラゴンクラッシュ!」



染岡の必殺シュート。ゴールへ食らいつくドラゴンは、なんとしろ君の片足の蹴りだけで止められてしまった。

決して威力が低いなんてことはない。なのに、あんな簡単に止められるなんて。とんでもない実力だ。



「出番だよ………」



しろ君がマフラーに触れた。直後、染岡がボールを奪うべくスライディングをしかけたけど、吹き荒れた雪風に吹き飛ばされた。

攻撃的というか好戦的というか、とにかくしろ君の雰囲気がガラリと変わった。目付きとかも。ふわふわした感じのしろ君とは違う。そう、あれはまるで……。



「アツ君……?」



バチリ、と目線があった気がした。



「へへっ。この程度かよ。あまっちょろい奴らだ」



口調が変わってる。



「任せとけ!いつもみてーにバンバン点取ってやっからよォ!」



性格も変わってる。ますますアツ君っぽくて訳が分からない。でも点を取るってことは、これから攻めてくるってことで。



「おい美波!」

「な、何!?」



悶々としてたら、突然ゴール前から話しかけられた。距離があるから、声を張り上げてる。



「俺を止めてみろよ!」

「え?」



何故かあたしに宣戦布告。そしてダッと一気にしろ君が駆け上がってきた。

一之瀬のショルダーチャージを押し返し、一郎太と鬼道のスライディングタックルを吹き飛ばし、どんどんゴールに迫ってくる。凄いパワーだ。

あたし以外のディフェンダーは抜かれてしまった。……よく分からないけど、怯んでなんかいられない。あたしが止めるんだ。



「荒波!」



ざぱん。フェイントをかけながら、呼び起こした波でボールを浚う。……なんとか取れた。



「やるじゃねーか!」

「あ、たしだって、ずっと練習してきたからね!」

「ふーん、でもまだまだだなあ!」

「っ待て!」

「オレに勝つにはまだ早いぜ」



あっという間に追い付かれて、ボールを奪い返された。やっぱり凄い。もうゴール前で守兄と1対1だ。

構える守兄を見据えて、しろ君が口角を上げたのが見えた。



「吹き荒れろ、エターナルブリザード!」

「ゴッドハンド!」



凄まじい猛吹雪を巻き起こしながら突き進む氷塊と、迎え撃つ神の手がぶつかりあう。

次の瞬間、ゴッドハンドは凍りつき、砕け散った。シュートはそのままゴールを揺らす。先制点は白恋だ。



「守兄のゴッドハンドが破られた…」



りゅ……レーゼのアストロブレイクにも負けないくらいの威力だ。これが味方になるなら、エイリア学園から点を奪うのもきっと出来る。

期待に胸を膨らませていると、ドヤ顔のしろ君が近づいてきた。



「どうだよ!オレのシュートは!」

「うん凄かったよ、エターナルブリザード!」

「ふん。当たり前だ。宇宙人って奴らもオレがいりゃ一捻りだ」



鼻高々に胸を張るしろ君。しろ君、なんだけど、言動がどうしてもアツ君と被る。何よりエターナルブリザードは、アツ君の技だったような。



「……ねえ君は」



誰なの?そう聞きかけた時、認めねえ!と染岡が突っ込んできた。



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