荒波少女

□第3話 倒せ!黒の11人!!
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あたしたち雷門は宇宙人が現れたと聞き、ここ、奈良へ来ていた。が、奈良シカ公園には入れずにいた。

黒い服を着ている人たちは、通してくれそうにない。警察には話を通してあるはずなのに……。

そんな中、思案顔をしていたなっちゃんが携帯を取り出す。



「誰にかけてるの?」



そう聞くと、なっちゃんは意味ありげに笑う。そして電話が終わってから暫くすると、通れることになった。

なんでも、なっちゃんのお父さんこと、理事長に連絡を取ったらしい。理事長、凄い……。



「どんだけ顔が広いんだよ、理事長って」

「あたしもそう思うよ……」



これは流石に土門に同意だ。一体どんな人脈を持ってるんだろう。

とにかく公園には入れた。それぞれ手分けして、エイリア学園の手がかりを探すことになった。



「手がかりって言ってもなあ」



何もない。見渡すかぎり木で、ときどき鹿。鹿がいるなんて、まさに奈良って感じだ。

随分歩いたけど、手がかりっぽいのはない。……あれ、あの人影、一般人?立ち入り禁止の筈なのに。緑色の髪……まさか、レーゼ!?

……いやいやいやいや、何で奈良に。流石にもういないはずだ。まあ一応、こんなとこにいるんだから、何か知ってるかもしれない。



「おーい、そこの人ー!」



ビクッっと体を揺らして振り返った彼は、やはりレーゼじゃなかった。



「えーっと、エイリア学園について何か知らない?」

「い、いや……知らない、けど」

「そっか。じゃあね!」



方向転換して別の所へ行こうとすると、「待って!」と呼び止められた。



「何?」

「美波、だよね?」

「そうだけど……誰?どこかで会ったことあったっけ?」

「俺のこと覚えてない?」

「……ごめん、覚えがないや。どこかで会ったことある?」

「あー……。……ほら、美波はさ、よく自転車で遊びに来て、一緒にサッカーやったじゃん!」

「え……ああっ!!もしかして、リュウジ君!?」



思い出してくれだんだ!と、目の前の彼は笑った。ああ、そうか。リュウジ君だったんだ。

緑川リュウジ。あたしがまだ小学生だった頃、自転車で隣町まで行った先で会って、友達になった子の1人だ。

あの時は自転車がパンクして帰れなくなっちゃって、お日さま園に止まらせてもらったんだっけ。

それから時々お日さま園に遊びに行くようになって……ある日、皆が別の園に移動になったとかで、それっきりになっていた。



「でもなんでリュウジがここに?ヒロト君や風君、晴君、治は?」

「えーっと……」

「長い間会ってないから、あたしみたいに忘れちゃってるかなあ」

「……さあ、そうかもね」



表情が強張った。少しだけ、ほんの一瞬、スッと表情がなくなって。それが、まるで、



「……レーゼ」

「!」



何だろう、その図星っていう顔は。そんなまさか、まさかが有り得るっていうのか。

急にしどろもどろになったリュウジに、最悪の想像が脳にこびりついて離れない。



「君が、レーゼなの」



出てきた言葉は肯定形で、一拍置いて、リュウジは力なく頷いた。……ああ、そのまさかが当たってしまった。



「ねえ、何で雷門を……ううん、そもそも何で宇宙人なんかやってるの。皆は、どうしてるの」

「それは……それは、言えないよ」



言えない。……まあ、そうだと思う。各地の学校を破壊して、総理大臣を浚って、何か大きな理由があるんじゃないかって。

あたし達雷門は、エイリア学園を倒すために旅に出た。だから、それに関わる事なら何だって知りたい。

けれど……無理をしてまで、聞き出したいとは思わない。多分、こうして会っていることだって、本当はあまり良くないことだ。



「じゃあ、あたし行くね」

「待って!」

「うおわっ」



みんなのところに戻ろう。そう思って方向転換したところで、リュウジにグッと腕を掴まれた。

名前を呼んでも返事はない。暫く待ったところで、リュウジは口を開いた。



「皆を、助けて欲しいんだ」



そう言うリュウジの顔は、蒼褪めていた。



「皆って、」

「あの時にサッカーをしたメンバー、思い出したよね。皆の事だよ。エイリア学園には、まだ他に……俺達なんかよりずっと強いチームがある」

「ジェミニストーム以外にも、チームが……」



恐らくヒロトくんたちが所属しているだろう、他のチーム。しかもジェミニストームより強いなんて。



「助けてってどういうこと?やっぱり、何か事情があるんだよね。何か、脅されてるとか」

「……違う。そうじゃないんだ。俺達が……望んでやってることなんだ。でも、もう……父さんが……」

「父さん?吉良さんに何かあったの?」

「美波にこんなこと頼んでごめん。無茶苦茶なこと、言ってると思う。凄く勝手だと思う。でも俺は、あの頃に戻れたらって思うんだ」

「リュウジ!」

「今すぐは難しいと思う。けど、美波ならいつかはって、思えるから」



ゆっくり、一歩一歩、リュウジは下がっていく。開いていく距離が、ひどく大きく感じる。




「次、会う時は……フィールドで」


「待って!リュウジっ!」



追いかけたかった。けど……今にも泣きだしそうなリュウジを見ていたら、足が動かなかった。




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