荒波少女

□第2話 出撃!雷門イレブン!!
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決まると思っていた、雷門で一番の威力を誇る必殺シュート、イナズマブレイク。

これが反撃の狼煙になる。そう思っていたのに、ジェミニストームのキーパーに、片手で止められてしまった。



「え……」



衝撃が走った。よそ見をして、欠伸までしていた。完全に、舐められていた。


壁山がシュートを止めようと発動させたザ・ウォールは無残にも砕かれ、シュートは顔面に当たり、ゴールに叩き込まれた。

ドラゴントルネードはレーゼに蹴り返され、影野にぶつかり、そのまま得点となった。

圧倒的な強さ。敗北。その文字が脳裏に浮かんで、頭を振って追い払う。

みんなは絶対負けない。今までだってそうだったんだ。勝負は最後まで分からない。……気休めでも、そう自分に言い聞かせる。



「必殺技といってもこの程度。お前達の力の限界ということだ」

「俺たちに限界はない!」

「諦めの悪いことだ。その遠吠えは破滅を招く」

「諦めの悪いのも、俺たちの必殺技と言えるんでね」



千羽山との試合を思い出す。あの時、守兄は最後まで諦めない気持ちが本当の必殺技なんだと言っていた。

だから、諦めなければきっとチャンスはやってくるんだって……思っていたかった。



「では、二度と我らに逆らえないようにしてやろう」



……酷い試合だった。いや、こんなのを試合だなんて、言いたくないくらいだ。

フィールドに立っている仲間たちは次々に吹き飛ばされ、ボロボロになり、叩きのめされ、倒れていった。

みんなが傷ついていく。世宇子との試合も怖かったけど、その比じゃない。



「っく、ああっ」


「一郎太!」



飛んできたシュートから守兄を庇った一郎太は、地面に叩きつけられた。

パワーも、スピードも、テクニックも、全部負けていて、完全に一方的な試合。

倒れて立ち上がれない守兄の前で、レーゼが軽く蹴ったボールが静かにゴールに入った。



「……地球にはこんな言葉がある。キジも鳴かずば撃たれまい」



嘲笑うようにレーゼはそう言うと、黒いサッカーボールを傘美野中の校舎へ放ち、破壊した。

何も言わずに、ジェミニストームは姿を消した。

言葉も出なかった。



「そんな……」

「お兄ちゃんっ……」



頭の中が真っ白になる。崩れていく傘美野中が、雷門中と重なる。こんな、手を足も出ないなんて。

どうしよう。どうすればいい。誰かのうめき声が聞こえて、あたしはハッとした。



「……ぼーっとしてる場合じゃない。救急車、呼ばなきゃ!半田たちは、それくらい酷い怪我してる。みんなに手当をしないと!」

「っ、ええ!」



止まっていた時が動き出した。



「くっそー……」



見てることしかできなかった自分がもどかしい。仲間たちがこんなにも傷ついているのに。自分に腹が立つ。

怪我は半田、マックス、影野、少林、宍戸が特に酷い。他の奴も怪我は軽いけど、痛みは暫く残りそうだ。

こんなことになるなら、守兄のこと無視してあたしも試合に出ればよかった。

……あたしが出たところで、結果は何も変わらなかっただろうけど。きっと怪我人が増えただけだったと思うと、ますます悔しい。

もっと、強くなりたい。ただただ、そう思った。

「円堂くん」と守兄を呼ぶ声が聞こえた。気を失っていた守兄が目を覚ましたようだった。



「守兄!」

「美波……ッ」

「無理して起き上がったら駄目よ」

「宇宙人は?」

「……傘美野中の校舎を破壊して消えたよ」

「負けたのか、俺たち……」

「うん……」



まもなく救急車が来て、半田、マックス、影野、宍戸、少林寺が運ばれていった。


他のメンバーは、それぞれの家まで、響木監督がバスで送ってくれることになった。

世宇子との激戦に加えてさっきの試合、連戦で体力的にも、精神的にも、みんなはもうボロボロだ。

何もできずに負けてしまった。ゴールを守れなかった。そんなみんなの気持ちを考えると、胸が苦しくなった。

あたしも一緒に戦いたかった。そう思う反面、倒れていくみんなを見て、あたしの足は竦んでいた。交代したところで、何ができただろう。

バスの中で「大丈夫だ」とずっと言い聞かせてくれた守兄は、気づいていたんだと思う。

強くなりたい。強くならないと。次があるなら、今度はもう、絶対に負けたくない。




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