荒波少女

□第1話 宇宙人が来た!
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写真撮影やらインタビューやらを終えて、フロンティアスタジアムの外に出る。

守兄の腕の中には、金色に輝くトロフィー。フットボールフロンティアを制した、証。

互いに近くの人と顔を見合わせて、一斉に声をあげた。



「俺たちは!」


『日本一だーーーッ!!!』



大きな声で大合唱!抑えきれない興奮が沸き上がってきて、思わず身震いする。



「ね、守兄!あたしにもトロフィー持たせて!」

「おう、いいぞ!」

「うおおおお!凄いや!」



トロフィーはずっしりと重い。これが、今まで頑張ってきた成果の重さかあ!



「美波さん!俺にもトロフィー持たせてください!」

「うん!」



トロフィーに宍戸に渡す。それを影野がかすめとって、何故かトロフィー争奪戦が始まった。

これを手にすることが出来るのは、優勝した一校だけ。気持ちは分かるけど……。



「トロフィーは逃げないんだから、順番に持てばいいのに」

「美波だって興奮してただろ。さっきの"うおおおお"ってなんなんだよ」

「えっと……勝利の雄叫び!みたいな!」



なんだよそれ、と言う幼馴染はこの際スルーしよう。嬉しくて仕方がないのは、みんな同じだ。



「豪炎寺、早く病院に行ってやれよ」

「そうそう。夕香ちゃんに報告してあげなくちゃね!」

「ああ!」

「ありがとな、豪炎寺」

「……ありがとな、円堂」



固く握手を交わす守兄と豪炎寺。豪炎寺が転校してきて、帝国学園と練習試合をして、全てが始まった。

あの帝国が、部員が11人も居ないサッカー部に申し込んできた時は驚いたけど、あれが全ての始まりだったんだと思える。

一郎太たちが助っ人に入ってくれて、どうにか試合は始まったけど、歯が立たなくて、ボロボロにされた。

でも豪炎寺が来てくれたおかげで、帝国から点を取ることができた。そして、豪炎寺が入ってくれて、サッカー部が本格的に動き出した。



「そういえば、集中攻撃されたなー……」



帝国学園との練習試合の時、あたしにシュートを打つところまで攻められたのが、よっぽど癇に障ったらしく。

あの時は流石に痛かった。今度鬼道にアイスおごってもらおうかなー、なんて。

……このメンバーが1人でも欠けてたら、きっと優勝なんて出来なかったんだ。このメンバーで、本当に良かった。


帰りのバス内でも、まだまだ興奮は冷めない。

この優勝がスタートだという鬼道は、これから、どうするんだろう。元々帝国の敵討ちの為に転校してきたんだし。

土門ももうすっかり雷門も一員だけど、元は帝国だ。一之瀬のそのうちアメリカに戻っちゃうのかなあ。

そんなことを考えていると、話は練習試合の時のことに遡っていた。



「誰がここまで行けるってを想像した?俺達始めはたった8人だったんだぜ!」

「廃部廃部ってバカにしてたやつもいたよな」

「確かに。あの時をなっちゃんがマネージャーになるとは思ってなかったよ」

「そうね。私もまさかマネージャーをやるなんて思ってなかったわ。でも、それをいうなら、鬼道くんだって始めは豪炎寺くん以外相手にしてなかったわよ」

「最初はな。だが帝国との練習試合が、結果的にはお前たち全員を目覚めさせた」

「あたしが集中的に狙われたのは忘れないよ、鬼道!」

「……」



からかってやろうとそう言うと、鬼道の口元がひきつった。ゴーグルのレンズが光ったような。あ、これ練習スパルタコースだ……。

まあ、逃げたことを戦略的撤退と言い、みんなのツッコミに崩れ落ちた目金は置いておこう。

あれはどう考えたって逃げてた。気持ちは分からなくもないけど。




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