荒波少女in世界

□第1話 集結!日本代表!!
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エイリア学園との戦いが終わって、早いものでもう3ヶ月が経ち、あたしたち雷門サッカー部は、毎日のように練習をしていた。



「よし、ここまでだ!」


「みんな!休憩よ!」



豪炎寺のシュートを止めた守兄がそう言うと、続いて秋が言って、一旦休憩になった。

タオルを首にかけて、渡されたドリンクを一気に煽る。喉がカラカラだったから、水分が染み渡る感じだ。



「ぷはー」

「本当に女かよ」

「染岡こそ、その顔の拭き方おじさんみたいだよ」

「んなっ……」

「飲み終わったらこちらで回収します! ……? 夏未さん、どうしたんですか?」

「え?ううん、なんでもないわ」



なっちゃんの視線の先には、あたしたちを見ている紫の髪の女の子がいた。転校生かと思いきや、そういう訳でもないらしい。

揃って顔を見合わせていると、守兄が声を上げ、女の子へと駆け寄った。



「ねえ、フユッペじゃない?」


『フユッペ!?』



1年生たちがハモってるのを横目に、記憶を掘り起こしてみるものの、全く分からない。聞いたことはあるような気はするんだけどな……。



「そうだよね!フユッペだろ!俺俺!円堂守!」

「誰、ですか?」

「だから円堂守だよ!サッカーの守くん!あ、思い出した?」

「ごめんなさい、本当に分からないんです。人違いじゃないですか?サッカーが好き。だから見ていただけ」

「冬花」

「あ、お父さん」

「帰るぞ」

「はい。じゃあね、サッカーのマモルくん」



お父さんっぽい人が来て、女の子は軽くこちらに会釈すると、行ってしまった。



「知ってる子?」

「だと思うんだけど……。小1の時よく一緒に遊んだんだよな……」

「小1じゃ覚えてないかもなあ、サッカーの守くん!」

「うーん…」



染岡のからかいにも特に反応を示さず、守兄は考え込む。フユッペ……フユッペ……うーん、



「……そういえば、一時期よくその名前聞かなかったか?」

「え?あ、そうだ!なんか仲良くなった子がいるって言ってた!」



一郎太に言われて思い出す。確か小1の時のことだから、辻褄が合う。通りで聞いたことがある気がした訳だ。

まああの頃はあたしは一郎太とばかり一緒にいて、守兄とはお互いに違う人と遊んでいたから、会ったことはないけれど。

それにあの子がその"フユッペ"とは限らないし、だとしても、もう大体8年くらい前のことだから、忘れてても仕方ない。

あたしだって、リュウジに会うまでヒロトたちのことを忘れてたんだから。……何で忘れてたんだろうなあ。



「(ていうか、)」



あの「近々、また会えるだろうから」って、どういう意味だったんだろう。






***


「………あれ?」



カーテンからは太陽の光が入ってきてて、目覚まし時計は……え……?



「守!美波!今日は響木監督に呼ばれてるんでしょ!遅れたら怒られるわよ!」



お母さんの声が聞こえる。えっ、ちょっと、まさか、



「ね、ぼう……!?しまったあああっ!!!」



慌てて着がえて部屋を飛び出すと、守兄も同時に飛び出してきた。双子だからってこんなとこまで同じじゃなくていい!



「ってか守兄パジャマじゃん!」

「守!服着替えておいで!朝ごはん出来てるからね!」

「分かった!」



バタバタと部屋に戻る守兄を横目に、椅子に座って朝ごはんに手を伸ばす。昨日のうちに持ち物準備しといて良かった……。


食べるのもそこそこに、家を飛び出した。



「いっけねえ、こりゃ遅刻だ!」

「急がないと……あれ?」

「ん?」



振り向くと、あたしたちより年下っぽい男の子がいた。あたしたちが走ると彼も走って、止まると彼も止まって、その繰り返し。



「知り合いか?」

「ううん、知らない子だけど……」

「「………」」



試しに角を曲がった所で待ち伏せしてみると、思った通り追いかけてきた。



「うわっ!」

「何か用か?」

「はい?」

「さっきっからあとつけてただろ」

「分かってるんだからね」



そう問い詰めると、男の子は視線をさ迷わせて、あーとか、えーっと、とか吃り出す。

ちょっとキツく言い過ぎたかな、と思った時、男の子は雷門中を探していて、道が分からなくなったのだと言った。



「そしたら円堂さんたちがいたから、ついてったら分かるかなって……。すいません!」

「そっかそっか!でもなんで俺たちの事?」

「だって雷門中サッカー部の円堂守さんと円堂美波さんでしょ!サッカーやる奴だったらみんな知ってますよ!」

「へー、そうなんだ!」

「あたしたち有名人だったんだ……」



フットボールフロンティアの優勝に、エイリア学園の事件の事があったからなんだろうけど、なんか照れるな。



「俺、宇都宮虎丸。俺もサッカーやってるんです。響木監督から電話貰って、雷門中に来いって言われたんです!」

「え、君も!?」

「そうだったんだね。……あ、時間やばいんだった!」

「あーっ!そうだった!急ごうぜ!」



改めて3人で、雷門中に向かって走り出した。



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