荒波少女

□第6話 雪原の皇子!
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白恋中に到着したあたし達は、白恋中サッカー部に歓迎された。

決勝戦が終わって直ぐに学校が壊されて吹っ飛んでたけど、雷門はフットボールフロンティアで優勝して日本一になったんだった。

そして今は、エイリア学園に対抗するチームとして、日本中から注目と期待を集めている。……ちょっぴり複雑かも。

白恋中サッカー部はというと、個人的に嬉しかったのは、白恋には女子選手がいるということだ。



「真都路さんと荒谷さん!」

「名前でいいよ!私たちも美波ちゃんって呼んでいい?」

「もちろん!じゃあ、珠香ちゃんと紺子ちゃん!」

「うん!よろしくね!」

「こちらこそよろしく!」



塔子に引き続き、これで女子のサッカー仲間がまた増えた!

噂の吹雪士郎は丁度出かけてるそう。スキーかスケートかボブスレーか。サッカーだけでなく、ウィンタースポーツが大得意ならしい。

待ってる間暫く話していると、廊下の方から足音が聞こえてきて、紺子ちゃんが見に行った。聞こえてきたのはさっき聞いたばかりの声で、皆より一足先に確信する。

教室に入って来たのは、確かに大雪原で出会った彼だった。やっぱり彼が、吹雪士郎だったんだ。

反応はまちまち。大半は噂と全然違ったのもあって拍子抜けた感じだ。しろ君自身もよく勘違いされるとのほほんと笑う。自分の噂とか知ってるんだ……。

そんなしろ君にムカついてますオーラを出しながら教室から出ていった染岡を、秋が追う。染岡は一番豪炎寺の離脱に反発してたからなあ。

どうしたものかと考えると、誰かにジャージの裾を引かれた。振り向けば、そこには彼が。



「美波ちゃん……だよね?」

「やっぱり噂はしろ君だったんだ」

「雷門中の試合は中継で見てたけど、正直びっくりしたよ」

「あはは……。あたしも吹雪士郎の名前を聞いた時は驚いた」

「……まさか、知り合いなのか?」

「そのまさかです」



鬼道のじっとりとした視線が痛い。知っていたなら何故言わない、とでも言いたそうなのがビシバシと伝わってくる。



「名前聞いてしろ君かなとは思ったけど、確証は持てなくて」

「そうか」

「うんうん」

「僕のこと覚えててくれたんだね。嬉しいよ」

「しろ君こそ、あたしのこと覚えててくれたんだね」

「うん。改めてよろしくね、美波ちゃん」

「うん!よろしく!」



しろ君の方に向き直る。久しぶりに会ったしろ君は殆ど変わっていない。順調に成長しましたって感じ。

変わったといえば、しろ君がマフラーを付けている事だろうか。マフラーがトレードマークだったのアツ君の方だった筈。

それにここに来るまで何回も考えてたけど、あたしの記憶違いでなければ、しろ君は……。



「しろ君はディフェンダーの筈なんだけど……」



とはいえ単にポジション転向しただけかもしれないし、気にしたって仕方ない。噂に加えて熊まで倒すんだから、しろ君のフォワードとしての能力は間違いない筈。

さて本題。あたし達が北海道まで来たのは、吹雪士郎をチームにスカウトする為だ。話がしたいと申し出ると、何かを感じ取ったのかしろ君は、外にあるかまくらで話すのを提案した。

守兄、春ちゃん、瞳子監督と人数を絞ってしろ君とかまくらへ。残されて待つ間暇になったあたし達は、白恋サッカー部も交えて雪合戦をすることに。



「疾風スノーボール!」

「「ツインスノーボール!」」



必殺技をもじった雪玉投げに、思わず笑う。こういうのが男の子っていいなあってやつなんだろうか。あの鬼道でさえノリノリだ。



「マントはセーフだ!」

「ぶふっ」



セーフ?いやアウトだ!あれはずるい。と思ってたら、鬼道がゴーグルのレンズがキラリと光らせ、びしりとあたしを指差す。え、何。



「美波に集中攻撃!」

「ええ!?」



集中砲火ならぬ集中砲雪って、そりゃないよ!理不尽だ!



「断固抗議すぶふぉわあ!」

「これは戦略的攻撃だ」



容赦なく顔面に雪玉をぶつけられました。



「ジャージの中に雪入った!」

「それがどうした」

「! 隙あり荒波スノーボール!」

「甘いな」

「避けないで!」

「断る」

「ちょっと美波!独断専行は慎みなさい!」

「これは最早男と女のプライドの戦いなんだよなっちゃん!」



しれっと素っ気ない鬼道に向かって、投げる。ただひたすらに雪を投げる。鬼道も負けじと雪を投げてくる。

いつの間にか1対1の勝負になっていたけど、こうなったら意地だ。せっせと雪を固めて鬼道に投げつつ、考えるのはさっきのこと。

移動中、雪が落ちた音に酷く怯えていたしろ君の姿が、妙に印象に残っている。

蹲ったしろ君の背中は、熊を撃退出来るとは思えないくらいに小さく見えて、寂しそうだった。



「考え事か、余裕だな」

「うわちょっと待って!タイム!」

「無しだ。……く、風丸!」

「そろそろ、戻った方がいいんじゃないか!指揮系統が崩れてるぞ!」

「フ……そのようだな。ここは引こう」

「何この流れ……」



一郎太が投げた雪玉が飛んできたと思ったら、鬼道は自分のチームに戻っていった。とりあえずは助かった。



「加勢ありがとうね一郎太」

「どういたしまして。なあ美波、吹雪はディフェンダーでもあるのか」

「え!?何で?」

「さっき大きな独り言してただろ」



そんなに大きな声で言ったつもりは無かったけど、一郎太には聞かれてたらしい。



「うーん、分からないや。一郎太は気になる?」

「吹雪の実力がどれ程のものかは知らないけど、俺だってディフェンダーだからな。あいつもそうなら負けられない」

「それならあたしだってディフェンダーだからね!一郎太にもしろ君にも負けないよ!」

「そうだな」



意気込んでたら隙ありと一之瀬に雪をぶつけられた。何でかニヤニヤと笑っている顔がムカついて、二人で思いっきり顔面に雪をぶつけてやった。



 

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