とある夏の思い出

□6日目
1ページ/2ページ

私は園の中でも、青葉とは特に中がよかった。


好きなこと(サッカーとか)、季節(暑い夏は苦手)、嗜好(アイス好き)。

共通点が多く、話題があったからか、毎日のように話していた。

だからだろうか、いつの間にか私は、彼女に淡い好意を抱くようになっていた。

そんな日々が変わったのは、青葉がヒロトを気にし始めた頃だっただろうか。



「どうしてヒロトくんはいつも1人なの」



気づかれないようにしていた筈なのにと当時は何故だか分からなかったが、今なら分かる。

感覚的に、私たちがヒロトを疎ましく思っていたのを感づいていのだろう。

同情、哀れみ…今ならこの感情を抱いてしまうのだろうが(まあ本人に失礼だろうから、考えはなしない)、とにかくやつが嫌だったのだ。

理由があったにせよ、贔屓されるヒロトに、激しい嫉妬を感じたのだ。

特に女子のリーダー格だった玲名からの風当たりは、酷いものだった気がする。

そんな中、周りの空気を気にせずに、青葉は話しかけにいっていた。



「ヒロトくよ、サッカーやろう」

「いいよ、僕は」



父さん以外に心を開いていなかったヒロトは、青葉突き放そうとした。

そんな青葉に私は、ヒロトなど放っておこうと何度も言った。

だがそれは聞き入れられず、そうこうしている内にヒロトが折れ、2人でサッカーをするようになった。

仲睦まじく、一番仲が良かったのは私の筈だったのにと、また激しい嫉妬を沸き上がらせた。

だが気づけば、青葉の影響かヒロトは段々と受け入れられ、少しも認めていないのは私だけとなっていた。

それが嫌で、気に食わなくて、青葉を取られたくなくて、暴言を吐いてしまった。


お前なんかいなくなってしまえ、と。


我ながら最低なことを言ったと思う。だから、私は青葉に殴られたのだろう。



「家族なのに、何でそんなこと言うの!」



涙を零しながらそう訴えかけられ、己の愚かさを悔いたものだ。

贔屓の理由はどうであれ、お日さま園にいるのは心に傷を負った者が大半なのだ。

そして愛情に飢え、家族と呼べる存在に飢えていた。

それは私も同じだったのに。

その事に気づいた私は、徐々にヒロトを受け入れるようになった。

…彼女が死ぬことになるなんて、当たり前だがその時は思ってもみなかったが。




きっといつか、青葉はまた私たちの前から姿を消してしまうのだろう。

ああどうか、せめてその時まで、夢を見させてくれ。



→あとがき
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ