とある夏の思い出

□5日目
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広間で風介から強奪したアイスを食ってたら、髪の毛を引っ張られる感覚がした。

見上げれば青葉がいて、なんとも間抜けな表情をしている。



「咲いたー咲いたー」

「何がだよ」

「チューリップーのーはーなーがー」

「よーし分かった。表に出やがれ」



何だよチューリップって…。悪かったな、チューリップに見える髪型で!

つーかどうせなら炎って言えよ、炎。その方が俺にピッタリだろうが。



「風介に教えてもらったのがインパクトにありすぎて」

「いやいやいやいや」

「最早あたしの中では晴矢=チューリップなんだよね」

「ふざけんな」

「いたたたた」



風介のやつ…いつの間にこんなこと教えたんだよ。



「私が死ぬ前、だよ」



見透かしたように言われて後悔した。こいつが死んだ時とか、思い出したくもない。

死んだなんて思えなかった。でも体温が俺とは全然違って、低体温な風介よりずっと冷たくて、



「っ、くそ…」

「いたたたたっ、引っ張らなくても」

「うるせえ」

「じゃあ引っ張らな、いっ」



よく分かんねえけど、確かに何かを触ってるような感覚。

懐かしいこの声。

それだけで、ちゃんとここにいるんだって、実感する。



「相変わらず乱暴…」

「うっせー、この暑がり。寄んな」

「確かに晴矢の周りは暑いけどさ」



ぴとっ



「うぇっ」



変な声出た。何でっつーと、俺の背中に青葉がくっついたから。

幽霊だからだろうけど、冷たいのが背中に伝わってくる。



「晴矢の背中はあったかいんだよ」

「へーへー、そうですか。邪魔な」

「ぶべっ」



重さは感じねえけどとにかく邪魔っぽかったから、立ち上がるのと同時に払う。

いや何で床に激突してんだ。お前浮けるだろうが。



「そうだ、あたし幽霊だったんだ…」



あ、アホなとこ全然変わってねえ。



「そうだ、アイスまだあるかな」

「さっき食ってただろ」

「な、何でそれを」

「布美子にチクんぞ」

「ここは家族として見逃して、おにーちゃん」

「却下。あとキモい」

「…今度寝てる時水ぶっかけて起こしてやる」

「やめろ」

「あはは、ヒロト探してくるー」



そう言ってすうっと青葉は飛んでった。こえーからドアすり抜けんなよ。



「あったかい、ねえ…」



そういや、そんなこと前にも言われた気がする。






(ぐっもーにん晴矢!)
(ぶはっ、テメェマジで水かけやがったなあああ!)

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