とある夏の思い出

□3日目
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そしてまた次の日には、女子メンバー全員が見えるようになっていた。

何か法則でもあるのだろうかと考えてみるけど、そういうものは全く思い付かない。

それを見つけたところでどうなるかというと、どうにもならないのだけれど。

この調子だと、最終的にはみんな見えるようになりそうだけど、まだまだかかりそうだ。

ただ見えていない男子メンバーは、狡いと言いたげな目で俺たちを見てくる。というか呟いてる。

そんなことを言われても、俺たちには何も出来ない。そもそも青葉自身がよく分かってないのだから仕方がない。

全く、どういうことなんだか。



「青葉!男子共は放っといて行くわよ!」

「え、でも…」

「いいから!」



あ、杏に強制連行された。女子にとって、青葉は妹みたいな存在だから。

年齢的には自分が年上の場合もあるのに妹扱いされるのは、お日さま園に入るのが遅かったからだろうか。

そんなことを考えていたら、晴矢が溜め息をついた。



「…何で俺ら男子って女子に勝てねーんだろうな」

「そんなこと言われても…」

「だってそうじゃねえか。つーかアイツら気ィ強すぎだろ」



玲名に布美子に杏にクララ…うん、確かに気が強い子多いね。

瞳子姉さんも含めると…ダメだ、勝てる気がしない。というか何で俺こんなこと考えてるんだろう。

そういえば、



「姉さんには見えてみたいだね」

「言われてみれば、確かにそうだな」



何処から出てきたのか、アイスをくわえた風介が返す。また食べてる…。



「俺たちに見えて姉さんに見えないっつーことは、子供には見えて大人には見えないってことか?」

「そんな単純なことには思えないが…まあ単細胞にしてはよく考えたな」

「厨二病に言われたくねえ」

「何…?」

「ストップ、喧嘩はしないでね」



そう言ったら、何故か2人共青ざめた顔でガクガクと頷いた。俺が何をしたというのか。

それに、言い合いでいつの間にか話が逸れてしまっているし…。



「俺は晴矢の考えを推すけどな」

「根拠はあるのか?」

「無いよ。無いけど、そんな気がするんだ。勘、かな」

「曖昧だな…」



そう言って風介は顔をしかめた。そういえば、風介は曖昧に濁されるのは嫌いなんだっけ。

晴矢もそうだから、緑川風にいうなら、まさに喧嘩する程仲がいい、だ。



「なんだかんだいって仲いいよね、2人共」

「「仲良くない!」」



そう同時に言って睨み合う。同じことを言うくらい仲がいいじゃないか。



「でもさ、アイツら青葉が見えるようになって表情明るくなかったよな」

「確かにそうだな。いいことじゃないか」



そうだ。見ていればわかるけど、表情が明るくなった。

みんな表面には出さないけど、エイリアの時のことを引き摺っているんだ。

だから、雰囲気が良くなったのはいいことだとは思う。けど、



「(俺が最初に見えるようになったのに…)」



青葉を取られてしまった、そんな気がして、

どうしてもそう考えてしまう。



「(俺ってこんなに独占欲強かったんだなあ…)」



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