とある夏の思い出
□2日目
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次の日。まさかとは思っていたけど、本当に異変が起きるなんて考えていなかった。
ガシャン
手を滑らせたのか、玲名は持っていたお皿を落とした。
「ちょっとどうしたのよ」
不思議そうに布美子が割れてしまったお皿の欠片を拾いながら、呆然と立ち尽くす玲名を見る。
何かあったのだろうかとその場にいたメンバーの視線は、自然と玲名が今見ている方へ向く。
そこには、ソファーに座ってアイスを食べながら雑誌を読む風介がいた。
そしてその右肩辺りに青葉が浮いている。…もしかして、玲名にも見えてるのかな?
周りを見渡せばきょとんとしているやつが大半だけど、固まっているのも何人かいた。
「ヒロト、これってやっぱりさ」
「そう、だよね…」
「玲名以外にも見えているみたいだけど…」
「っ、どういうことなんだ!」
「な、何だ!」
「え、玲名!?」
硬直が解けたらしい玲名が、風介の胸ぐらを掴んだ。状況を把握していない風介は、目を白黒させている。
「だから、お前の右肩に、そこにいるのは誰だと聞いているんだ!」
どこか泣きそうな玲名の表情を見て、確証を持つ。間違いない、見えているんだ。
青葉はみんなから好かれていたけど、女子メンバーの中では特に玲名に可愛がられていたから。
「とりあえず落ち着「これが落ち着いていられるものか!」
「ぐはあっ!」
「うわ…痛そー…」
止めに入った晴矢の鳩尾に、玲名の裏拳がクリーンヒットした。その場に蹲る晴矢に、血相を変えた茂人が駆け寄る。
晴矢には悪いけど、声をかけなくてよかったと思った。緑川を見れば、明後日の方向を見ていた。
青葉を見れば、慌てたように風介と晴矢の間を行ったり来たりしている。
「私も気になるわね」
「あたしも」
「えっと…、晴矢は何か知ってる?」
「わり…今…無理………」
…相当痛かったらしい。顔色が悪いことから、そう伺える。
でもごめんね。今晴矢を気にしていたら、風介まで犠牲になってしまうから。
「ぐっ…」
「ちょ、絞まってる!絞まってるよ!」
「ほら、絞めてたら話せることも話せないから、一回離そうか」
「……」
渋々といった様子で玲名は手を話した。噎せる風介の背中を修児が擦って、由紀が水を持ってきた。
宇宙人の頃からそうだったけど、風介はダイヤモンドダストのメンバーに本当に慕われている。
いや、そんなこと考えている場合じゃなかった。
「どういうことなのか話せ」
「あ、うん…」
威圧感が凄すぎるよ、玲名。
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