とある夏の思い出

□1日目
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「おはようヒロト」

「………!? うわっ!」



朝起きると、目の前には青葉がいた。驚く反面、いてよかったという安心感が湧いてくる。

ふわふわと浮いて笑っている青葉を見て、自然と俺も笑った。



「そろそろ起きなきゃダメだよ」

「そうだね」



時計を見れば、針はいつも起きる時間より遅い時間を指している。しまった。

着替えて(勿論青葉には出ていってもらった)広間に行くと、みんな殆どが起きてきていた。

いないのは…緑川と晴矢と風介だ。晴矢と風介はともかく、緑川が寝坊するのは珍しいな。

そう思っていたら、後ろから声がかかった。



「おい、入り口で立ち止まんな…って………、は!?」

「………!?」



振り向けば唖然としている2人。低血圧で朝に弱い風介でさえ、一瞬で眠気が吹き飛んだという顔をしている。

そして次の瞬間、



「ギャアアアアア!!!」

「うわああああっ!!!」

「え、何…って……えええええ!!!」



2人と丁度起きてきたらしい緑川の絶叫が響き渡った。晴矢が指差しているのは、青葉がいる所。

…まさか、



「お、おまっ、ヒロト!」

「な、ななな、何で!?」

「陽炎が浮かび上がるような暑い夏の日差しを受け冥界との扉が開いたというのか!?」



…いつも通り痛々しい風介の発言は置いといて、3人に青葉が見えていることがわかった。

昨日は見えなかったのにと横目に見ると、青葉も首を傾げている。理由は分からないらしい。



「3人にも、見えてるの?」

「「「喋ったああああ!?」」」



再び絶叫。女子メンバーからの冷たい視線が突き刺さる。あれ、俺は何もしてないよね?



「まさかヒロト憑かれてるのか!?は、祓わないといけないのか!?」

「晴矢は私に消えろと!?」

「闇の力に引き寄せられて召喚されたのか…」

「風介違うから」

「とりあえず落ち着いてさ、状況整理を…」

「流石はリュウジ。冷静だね」

「え、あ、うん。ありがとう」



冷静なんじゃなくて、あまりのことに逆に冷静になったんだと思う。なんせ晴矢と風介が大騒ぎしているから。

でも、3人の中で一番落ち着いてるのは緑川だし、緑川に事情を説明しよう。



「実は………」



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