とある夏の思い出
□0日目B
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お日さま園に戻って、夕飯を食べて、お風呂に入って、一段落した俺はベッドに寝転がった。
ちなみに人数の関係上、俺だけ一人部屋だったりする。
「どう?久しぶりのお日さま園は」
「うーん。あんまり変わってないね。だからこそ落ち着くな」
「そっか」
青葉がこうして俺の前に来てくれたのが、宇宙人をしていた時じゃなくて本当によかった。
あの時の俺たちなんか、とても見せられたものじゃない。世に言う黒歴史というやつだろう。
まあ風介や晴矢は、ある意味あれは素だったんだけどね…。ああ、砂木沼もか…。…うん、絶対に見せられない。
「それにしても……どうして来てくれたの?」
「あー、言わなきゃダメかな」
「いや、無理して言わなくてもいいけど…」
「うーん…。簡単に言えば、心配だったからかな」
「心配?」
「まあ、私も死んでから色々あったからね」
意味深なことを言って、青葉は何かを考えるような仕草をした。
死んでから何があったのか。恐らくだけど、あまりいいものではないのだろう。
そういえば、
「青葉は俺以外には見えないみたいだね」
「今のところは…」
お日さま園に帰ってきて、幾つか分かったことがある。
まず1つ目。青葉は俺以外には見えないこと。みんなに声をかけていたけれど、気づかなかった。
2つ目、物には普通に触れること。何かを持ち上げることも出来るみたいだった。
3つ目、見えない人は触られると、靄に触られているような感じるみたいだ。現に晴矢が身震いしていた。
一応言っておくと、俺はちゃんと触れられている感覚はあるし、少しだけ温かいのも感じた。
4つ目、食べ物は食べられる。空腹は感じないみたいだけど、味覚はあるらしい。さっきアイスを分けてあげたら喜んでくれた。
考えれば考える程わからなくなる。何で俺だけが見えるのだろうか。聞いてみても、
「あたしにも分からないんだよね…」
と、本人にも分かっていないようだった。
「ん…」
「眠そうだね、ヒロト」
「ああ…、まあね」
考えるのを止めたら、どっと疲れが押し寄せてきた。思っている以上に疲れたみたいだ。
「俺はもう寝るよ。青葉はどうする?」
「久しぶりのお日さま園だし、もうちょっと見てまわる」
「分かった」
「おやすみ、ヒロト」
「おやすみ、青葉」
青葉が壁を突き抜けて行ったのを見届けて、目を閉じる。
明日、起きたときに彼女がいますように。そう考えながら、眠りに落ちていった。
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