とある夏の思い出

□0日目A
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彼女と会ったのは、俺がお日さま園に来てから1ヶ月くらい経った時だった。

その頃の俺は父さんに"吉良ヒロト"と重ねられていて、特別視されていて、みんなから妬まれていた。

その時、彼女は来た。

最初の頃は慣れない環境からか控えめだったけど、自然と明るくなっていって、みんなとも仲良くなっていった。

特に風介とは趣味が合ったらしくて、よく一緒にいたのを覚えている。

そんな彼女は父さんが俺を特別視していることを知らず、俺によく話しかけていた。

その度に俺は突き放そうとしたけど、彼女は聞かなかった。毎日のように話しかけてきて、俺を誘った。

何度も何度も、繰り返し誘われてとうとう俺は折れた。その時の彼女の満面の笑みは、今でも鮮明に思い出せる。

あの、胸の高鳴りも。

彼女のおかげでみんなと少し馴染めて、嬉しかったのも覚えている。


でも、別れは突然やってきた。

事故だった。

姉さんに買い物を頼まれて出掛けていた青葉に、信号無視をした車が突っ込んだそうだ。

ほぼ即死で、その割には綺麗な顔をしていて、ただ眠っているだけのように見えて、直ぐには受け入れられなかった。

受け入れられなかったのは晴矢たちも同じで、みんな泣いていた。

でも、俺は泣かなかった。泣けなかった。青葉が死んだなんて、信じられなかったから。

いや、信じたくなかったんだ。そんなこと、出来る筈がなかった。


それからエイリア学園とか色々なことがあったけど、何かある度にその時のことを思い出していた。

そして今、円堂くんの、円堂くんのチームのおかげで、今の生活を送れている。

そんな俺の前に、死んだ筈の青葉が現れた。白昼夢でも見ているのだろうか。



「夢なんかじゃないよ、ヒロト」

「本当に、青葉…?」

「そうだよ」



触れてみれば、あまり感覚はないけれど、僅かな温もりを感じた。



「あれ、ヒロト触れるんだ。ここに来るまで誰も見えなかったし、触れられなかったのに」

「本当に、青葉、なんだ…」

「嘘ついてどうす、わっ」



少し透けている彼女を抱き締める。感覚なんてほとんどない。

けど、彼女は確かにそこにいた。



「…お帰り、青葉」

「…ただいま、ヒロト」



笑ったその笑顔が、俺の記憶の中のものと重なった。



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