とある夏の思い出

□0日目@
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ふと空を見上げると空はオレンジ色に染まっていて、日が暮れようとしていた。

手に持った袋がずっしりと重い。無理矢理でも晴矢か風介でもつれてくればよかったかな。

ああでも、2人をつれていくといらないものまで買ってしまいそうだ。



「もう1ヶ月、か…」



そう、あの日。俺たちが円堂くん率いる雷門に負けてから、早くも1ヶ月が過ぎようとしていた。

昨日のことのように鮮明に思い出されるあの日の出来事。あのあと彼らは、父さんの部下だった研崎の野望も打ち砕いたそうだ。

そして今、俺――基山ヒロトは、再びお日さま園で暮らしている。あの計画が始まる前のように、みんなで。

…いや、違った。1人だけいない。

あの子だけ、いない。

仕方のないことだ。だって彼女は…。



「すみませーん」



自分にかけられたであろう声に、ハッとした。声の方を見れば、まだ幼い子供数人がいた。そして俺の足元にはサッカーボール。



「とってもらっていいですかー?」


「ああ、うん!」



蹴ろうと思って足を構えて、止めた。

今の俺に、このボールを蹴る権利なんてあるのだろうか。

サッカーを使って破壊の限りを尽くした、汚れきった俺に。



「どうかしましたかー?」



不思議そうな表情を向けられる。どうしても蹴る気になれない。

ボールを拾うと、軽く投げた。「ありがとうございます!」という声を聞きながら、再び歩き出す。

きっと俺は、苦笑いを浮かべているんだろうな。



「はあ…」



立ち止まって空を見上げる。少しずつ闇に染まっていく。早く帰らないと。



「らしくないなあ、ヒロト」



ふいに後ろから声が聞こえた。

聞き覚えのある声。



「難しい顔してるね」



俺にとって大切な人の声。

でも、もう二度と会えない筈の人。



「なんかボール蹴れないくらい悩んでるの?ある意味ヒロトらしいかも」



そんな筈ない。

だってあの子は、

彼女は、もう、


分かっている筈なのに、後ろを振り向いて、俺は目を見開いた。



「久しぶりだね」


「青葉…」



もう、死んでいるじゃないか。





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