荒波少女

□第13話 最後のワイバーンブリザード!
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河川敷まで行くと、もう皆集まって練習をしていた。



吹「遅ぇぞ美波!」

「(今はアツヤかー…)あはは、ごめん」

吹「ったく、お前が最後だぜ?俺達はさっきっから『ワイバーンブリザード』の練習してたのによ」

「へー!どう?」

染「ああ!完璧だ!」

「おー!、………?」



一瞬、一瞬だけだけど、染岡は顔をしかめた。明王ちゃんのスライディング入ってたしな…。



「足、大丈夫?」

染「これくらい平気だって」

「無理しないでね」

吹「平気だっつってんだから大丈夫だろ。行くぞ!」

「わわっ」



アツヤに引っ張られてグラウンドへ。よーし、



「行くよ杉森!」


杉「来い!」


「『アクアストリーム』!」


杉「『シュートポケット』!ぐあっ!」


「うっし!」



あたしのシュートはゴールに突き刺さった。うん、前より威力上がってるかも!



風「凄いな、美波は」

「そんなことないって!」

風「いや…、俺なんかより凄いさ」



そう言った一朗太の表情は、どこか寂しげだった。



風「…俺も美波を守れるくらい強くなれたら………」

「どうかした?」

風「いや、なんでもない」

「そっか」



気のせいだったのかな?






それから、染岡とアツヤが『ワイバーンブリザード』を打とうとしたその時、



染「『ワイバーン』…、っ!」


『!』



染岡が、倒れた。



「染岡っ!」



肩を貸しながらベンチまで行き、座らせる。かなり痛そうだ。



円「染岡、お前…」

染「なんだよ、皆大げさなんだよ」

円「無理すんなって!」

「そうだよ!こんなに腫れてるじゃん!」

染「無理なんかしてねえよ」



そう言った染岡に、古株さんが怒鳴り付けた。



古「真・帝国戦の後、ちゃんとケアしなかったな」

染「ホントに大丈夫ですから!」

古「強がったところで、何の得もありゃせんぞ」



その言葉に染岡は黙りこんだ。やっぱり相当酷いんだ…。



鬼「イプシロン戦は1週間後なんです。それまでに染岡は…」

古「1週間やそこらで、治るもんかい!」

染「治す!こんな怪我、1週間で治してみせる!治んなくても、次のイプシロン戦、前半だけでもやらせてくれよ!


折角完璧になった『ワイバーンブリザード』はどうすんだよ!なあ!吹雪!」

吹「…ごめんね、気づけなかった僕のせいだ…」

「しろ君…」



その時、瞳子監督が歩いてきて、染岡にはチームを外れてもらうと言った。



円「え、監督…、そんな、染岡は!」

風「本人がやると言ってるんです!やらせてやってもいいじゃありませんか!今の俺達の必要なのは、自分の体がどうなろうが勝つという気迫です!」

円「風丸…」

風「円堂、お前だってわかるだろ?染岡は最初から雷門サッカー部の支えてきた、仲間なんだ!」



…1年以上前の、サッカー部が出来たばかりの頃を思い出す。

染岡と半田が入ってくれて、4人で練習して、守兄ぃは強力なフォワードが入ってくれたって、喜んでたっけ。

…一朗太の言うことも分かる。けど、プレイし続けることで悪化したら、もとも子もない。



瞳「仲間だからこそよ。彼はきっと、チームのために無理をする。


そうなれば皆が彼を気遣って、満足に戦うことができなくなるわ」

風「でも!」



ダンッ、と染岡がベンチに拳を打ち付けた。



「染岡…」

染「もういい、風丸。悔しいけど、監督の言う通りだ。仕方ねえ。吹雪!雷門のストライカー、任せたぜ!」



それに対してしろ君は小さく頷いたけど、表情は暗い。しろ君だけじゃなくて、皆がだ。



染「なんだよ皆、そんな顔すんな!一時撤退ってやつだ!また、すぐに戻ってくる!」

「っ……待ってるからね、染岡のこと!」

円「…必ず、戻ってこいよ」



そう言った守兄ぃも、辛そうだった。





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