神喰物語

□【04】 過去編
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 ベースに別れを告げ、一向は極東支部へと引き返した。
ソーマは神機を傍らに、何故だか満ち足りた気分だった。


 ポケットにキャンディーを仕舞い込むと、静かに瞳を閉じた。















 闇の中で淡い金色の髪をした真っ白な少女が立っている。
ソーマに向かって笑顔で手を振って、きゅっとうずくまるようにしゃがむ。


 ソーマは少女に向かって歩き出す。
今なら、また……あの温もりに触れられるかもしれない。
これが夢だとわかっていても、せめて、何かのお礼がしたい。

 自分も、何故だか、理由もなく「ありがとう」と伝えたかった。



 もう少しで手が届く……。そう思った矢先、少女はすくりと立ち上がる。
くるりと向きを変えると跳ねるように走っていく。ソーマから離れていく。


 ソーマは何かが怖くなって追いかけようとした。
だが、足が動かない。それに苛立ち、ばっと足元の地面を見下ろした……、そこには優しい光景が広がっていた。



 ” だ い す き ”



 年相応なかわいらしい文字でつづられた言葉に、ソーマははっと顔を上げた。
少女は………………もう、そこにはいなかった。




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