神喰物語

□【04】 過去編
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 公領とした白と青の世界に風が吹き抜ける。
ソーマは獣と人の血が入り混じる空間でじっと、ツバキの後姿を眺めていた。
 彼女は死した軍人に膝をつき開眼されて硬直したその目を、優しく下ろさせていた。


 ソーマはルーシャの気配がどこか遠くへと消えてしまったことに気が付いていた。
ツバキもリンドウも「本部へ帰ったのだろう」と同じ結論を出し、ヘリが発つのを待っていた。



 「申し訳ありませんが、雨宮ツバキ殿でいらっしゃいますか?」

 「……?そうだが」


 ソーマは首をかしげた。
唐突に現れた男はツバキに頼みリンドウと自分を招集させた。
 素性は、男が言うには「フェンリル本部第1部隊所属 ベース=フィンデル衛生曹長」だそうだ。


 「あなた方には、ある方からの伝言があり集まっていただきました。
  まずは、これを……」


 男がツバキに差し出したのは、その屈強そうな体とはいかにもギャップのある
愛らしい包装セロハンに包み込まれた3つのキャンディーだった。

 そして、男の言った言葉にソーマたちは安堵した。


 「ルーシャ殿からです。私のかわりに皆様に差し上げてくださいとの事です」


 ツバキが包み紙の柄は気にせず、素早くリンドウとソーマにキャンディーを配る。
白地に青いハートが転々と付いたそれは、なんとなくルーシャはこれがソーマに当たることを
期待してベースにこれを託したのではないだろうか……と錯覚するほど、ソーマの雰囲気によく似た色だった。


 「そして、最後にルーシャ殿からの伝言ですが……”ありがとう、またね”と、あなた方に
  伝えてほしかったそうです」


 空気が和み、全員の顔が少しだけ綻んだ気がした。




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