神喰物語

□【02】 過去編
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     バラバラバラバラ


 ヘリの音がより一層激しく、いきり立って聞こえる。
作戦会議で加わった小さな少女の神機使いルーシャをつれて、リンドウたちは急ぎにヘリへと飛び乗った。

 猛吹雪はまだ収まってはおらず、風に煽られ扉は閉まりにくく
なかなか飛び立たないでいるヘリ。
苛立った姉が一声怒鳴ると操縦士は小さく悲鳴を上げ、おずおずと操縦桿を持ち上げた。
パイロットに比例してようやくゆっくりと飛び上がったヘリは、戦略地点の核融合炉を目指して一直線に飛んだ。


 横風に見舞われ、グラグラと不安定に飛ぶヘリ。
眠るように目を閉じて座るソーマの横に、ルーシャがうずくまるようにして座っている。

 プロペラが一定にうなり続ける合間にルーシャがコンコンと咳を漏らす。


 「よっ、ルーシャ。……なんだ、風邪か?顔色もあんましよくないけどよ」


 リンドウの声にゆるゆると頭を上げたルーシャの顔は先ほどよりもずっと青く、
真っ赤な瞳は涙で濡れていた。


 「……また泣いてるな。…戦いに行くのが怖いのか?ん?」

 「………」


 ルーシャはふるふると首を横振りする。
どうやら風邪を引いたわけでも、怖いわけでもないらしい。


 「リンドウ……、………んーん、やっぱりなんでもない」


 ほんの一瞬ルーシャの明るい瞳に黒いインクを一滴落としたようなかげが生まれたが、
またすぐににっこりと微笑むと誤魔化すように目を細めた。

 その表情が、酷く痛々しいものに感じられた。
何か、何か恐怖のようなものを押さえ込んでいるような……見ていて胸が張り裂けそうになるような……
そんな、リンドウの苦手な表情だった。




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