神喰物語
□【01】 過去編
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西暦2065年 ユーラシア大陸 旧ロシア地区 連合軍作戦指令基地
引っ掻き回すような猛吹雪。
周囲は夜の気をまとい、ヘリはソーマたちを武装に飾られた要塞に降ろした。
風負けせぬよう、勢いよくヘリの扉が開く。
黒髪と目鼻立ちが似通った血縁と思わしき同業者のツバキとリンドウが先頭を切って降りてゆく。
ツバキの癖のようにゆるやかに波打った髪と、リンドウの煙草の煙が凍てついた風にさらわれた。
ソーマも習うように(別に習うつもりはないが)して硬い地面へと降り立つ。
30を幾年か越えたような男がソーマたちの素性を改めると、
ツバキが肯定の意を伝えるかのように視線を流す。
リンドウは気だるそうに煙草の煙を吐き出し、キョロキョロと建物を見上げる。
その瞳は若干の好奇心と、若干の気だるさを宿し吹雪が一層強まると、
また何事も無かったかのように詰まらなさ気に前を見つめた。
射殺すような視線。
ソーマは何気なくその方へと目をやる。
そう階数の多くない建物の最上階から、見くだすような目で見ている屈強そうなが体の男。
ソーマは何事もなかったように視線を戻すと誘導係に従い、建物の中へと入っていった。
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