神喰物語

□【01】 過去編
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    バラバラバラバラ……


 鼓膜に何らかの害がありそうな、そんな爆音の根源ヘリコプターの機内。
ソーマは薙ぐような風の中でじっとつま先を眺めていた。


 先ほどまでの惨事を思考に……ソーマは思い返していた。
来るときは吹雪いていたその大地が、今は異形の砂漠と化していた。
それは異常気象でもなんでもない。急激に空間が捕食されたために発生した事象だった。
 

 十数年前に発見され、それから爆発的に変化・増殖して言った未知の存在オラクル細胞。
その細胞自体が単細胞生物であり、発見当初のミクロサイズのものからたった1年の間で
現在の荒神と呼ばれる存在の獣型オラクル細胞が確認された。
 オラクル細胞はあらゆる物体を捕食し、また、捕食した物体の性質を取り込むことが出来る。
故に人類は大半を捕食され、植物や建造物や核を搭載した兵器でさえもオラクル細胞の集合体である
荒神に喰い壊されてしまった。


 ソーマたちが派遣されたのは、その荒神たちに対抗しようとしている人類最後の連合軍の
作戦指令基地に合流し、共闘するためだった。


 ソーマはふと、コバルトのコートからのぞく自分の褐色の指先に目をやった。
ソーマは自分の姿を思い浮かべる。
 灰コバルトの目、褐色の肌、何より憎いのが白金の髪。
ソーマは自分が異質であることを知っていた。そんな自分を疎ましく思っていた。
 別に外見だけが疎ましいわけではない。ようは”中身”の問題なのだ。


 静かに、目を閉じる。
眠いワケでもなく、何かに集中したいワケでもない。
ただ、何かから目を背けるように。ただ、自分から目を背けるように。


 闇に落ちた視界のどこかで、フッと、優しい光を感じた。
ソーマはそっと手を握り締めた、そして、その感覚を思い出した。

 ソーマは眠るようについ先刻の大乱闘を思い返した。



 どこか遠くで、飄々としたリンドウの声とそれを叱るようなツバキの声が聞こえた。
その小さな気配も、ヘリの機械音に呑まれた。




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