神喰物語

□02 再会
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 その日、ソーマの機嫌は最高潮に悪かった。


 理由はいくつかあるが、強いて挙げるのであれば……
リンドウからあいつ自身の溜まりに溜まった報告書を押し付けられたり(有に3か月分は越していた)、
今日は特に立て続けに入ってくる任務で回復錠を切らしたり(時間がある時に限ってよろず屋は不在)、
同行者のサクヤの神機の不都合によって単独になった任務(内容聞いて、もう荒神なんて放っときゃいいんじゃねぇかと思った)、
何より付いていないのが、ヴァジュラと交戦中サクヤから入ってきた連絡に気を取られ携帯端末が大破した事
(今日は厄日なのではないか、と少し今の現状を不憫に思ってしまった)、
などだ。


 おまけに、こっちに来るはずだったヘリは愚者の空母で重傷者が出たとか何とかでUターン。
おかげで荒れ狂う猛吹雪の中、廃寺にて適合神機のイーブルワンと共に待ちぼうけを食らっている有様。


 なんなんだ。俺が一体何をした。


 今荒神が出てきたらスサノオだろうがウロヴォロスだろうが、一撃でひれ伏させる自信がある。
ソーマがついにそんな世迷言を脳裏にちらつかせた時だった。





    PPPPPPPP………

    PPPPPPPP………





 虚無過ぎる空間に無機質な電子音が横切った。


 何かと懐を探ってみると、先ほど大破した(ほぼ液晶部分しか残っていない)携帯端末が果敢にも
自らの命を削り、持ち主に通話電波を受信したことを知らせていた。

 3分の2ほどひび割れて解読不能となった液晶には、”アマ ヤ  ド ”と表示されており、
不覚にも「雨宿り」とインプットしてしまった脳を、内心鼻で笑い飛ばしながら「雨宮リンドウ」へと回線をつなごうとした。


 だが、残念ながら今の状態(つまり大破した状態)の携帯端末にはボタンと言うものが”2”と”0”しか存在せず、
後は頼りない電線で繋がっているだけだ(ちなみに本体であるチップは無事なようだ)。

 もちろんのこと、通話ボタンなどどこ吹く風である。



 さて、どうしたものか。
迷っているうちに、向こうが痺れを切らしたのか受信は一方的に絶たれた。
それに力尽きたように、手のひらの中の携帯端末は配線からバチッと軽く火花を散らせ、
まるで息を引き取ったかのごとく液晶の灯火がたどたどしく消えた。


 こいつは榊のとこに持ってっても駄目そうだ。


 と、今日という厄日に悪意満載の呪文を唱えながらソーマはヘリの到着を待った。










 そんな今日は特に不運すぎる彼の元にヘリが到着したのは、かれこれ6時間後のことだった。




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