神喰物語

□【04】 過去編
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 不思議な感覚だった。
熱いとも、痛いとも思わない。ただ、何かに押しつぶされるような……縛り付けられるような……。
 つんざくような爆発音を、硬い金属をぶつけ合わせたようなキィィィンとした高い音が
呑み込んだかと思うと数秒後には無に等しい音と、砂漠に吹くそよ風のような風を頬に感じた。



 ゆっくりと、目を開く。
先ほどまでの惨事が嘘のように、気味の悪いほど青い空が広がっていた。
 

 どうやら発作は退いてくれたようで、口元の血をなめとると鉄の味が香った。
 少し重い体を奮い立たせ、周囲を見回す。
ツバキやルーシャがあけた穴などとは比にならないほどに深く、大きな大地の傷跡の中にルーシャはいた。
 

 かばうように抱え込んでくれていたリンドウの姿はない。
おそらくは、爆発で離れてしまったのだろう。
 足元にはルーシャの体よりもずっと大きく重い瓦礫が詰まり、軍人だった人間たちの遺体が
無造作に転がっていた。


 「アヴィリット上等奇襲兵」

 「……早かったね」


 腰を下ろすルーシャを見下ろすかのように、が体のいい男が背後に立っていた。
ルーシャは瓦礫の下から神機を引っ張り出すと、ひょいっと背中に担ぎ上げた。


 「あの、本部に帰還する前にお願いがあるの。あなたは、少し残って極東支部の皆さんに
  これをあげて……私から、みんなにって。あっ!それとね。みんなにありがとう、またねって伝えといてね!
  絶対だよ?」


 ルーシャは本部で同じ隊に所属している男にそれを預けた。
男ははぁ、とため息をつくと、微笑ましげに「了解」といいルーシャをヘリへと送り出した。




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