終焉の鐘

□ヴィト―への道
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太陽がさんさんと照りつける昼下がり。

砂海を走る船が一隻。

「あ〜……」

彼らは秋の大陸から春の大陸へ向かっていた。

ちいさくなってゆくガロアを見、自分らを照りつける太陽を見、ため息をついた。

っていうかため息をつかないわけがない。

なぜなら最高に暑いからだ。

なのになぜわざわざ秋の大陸から春の大陸に行かねばならないのか。


それは、彼女の一言から始まった。

「トッピー、たまには帰ってあげたら?」

メクトの宿屋で食事をとっているとき、モルテが唐突に言った。

「帰る?」

「家に、よ。恋人がいるんでしょ? たまには帰ってあげたら?」

「……それは……」

「リ・ア、トッピーの彼女の作る料理食べたーい!」


……と、いうことで春の大陸に行くことになったのだ。

地図で対角線上にあるところに行くのだ。

確実に半日はかかる。

「ごめんね、トッピー」

「あやまることはないクマ。たまには顔出さないとな。


…………ところで、キリエ。

俺たちが向かっているのは春の大陸だな?」

「うん、そうだけど……」

「なぜ船は空中監獄跡に向かっているんだ?」

え? と首をかしげるキリエ。

そして向かう先を見ると、たしかに空中監獄に向かっている。

純粋に疑問に思っているトッピーに対し、キリエは複雑な心境でいた。

空中監獄はキリエの力によって消えたのだ。

そのため、監獄にいた全ての囚人が消えた。

「……」

「キリエのせいじゃないクマ」

「……」

「……それより……」

トッピーは手すりから降りると、操縦席に向かった。

「…………」

操縦席をしばらく見渡し、ふぅ、とため息をつくと再び出てきた。

次にトッピーが向かったのは二階の甲板。

「……、なんだ、トッピー」

「なんだ、じゃないクマ」

手すりに肘をつき、ただ空を見ていたアガンに、トッピーは言った。

「なぜ船は空中監獄に向かっているんだ」

「……え? 空中監獄……」

「このまま行くと空中監獄につく。さっき操縦席を見たが、目的地はヴィトーになっていた」

「!」




一方女二人は……

「ヴィトーについたら、モルテのすけすけの服着てるところ見てみたい!」

「……二人だけの時よ。外野はいらないわ」

「うん!」

ヴィトーにつくときを今か今かと待ち、

もう一人は……

「……」

荷物をまとめていた。




何時になってもヴィトーにつかないことに疑問を抱きだしたモルテとリ・ア、そしてナジャは知らず知らずに集まっていた。

「いくらなんでも遅すぎじゃないですか?」

「だよね。もうついてもいい頃だもん」

「まさか、迷ったってわけじゃないわよね?」

「まっさかあ!!」

ははは、と笑うリ・アとモルテ。だがその笑いもすぐに元気がなくなっていく。

「……」

「モルテ?」

答えず、モルテは部屋から出ていく。

そしてずかずかと操縦席のあるところまではいってきた。

「! モルテ!!」

キリエが真っ先にモルテに気づく。そして近寄ると、

「ごめんね。もうすぐだから。すぐ終わるから」

おろおろしながらモルテをなだめている。

なぜキリエがここまでうろたえているのか。

それは……

モルテは今片手にあの武器を持っている。

なんで武器を持ってるの? と聞こうと思ったが声にならない。というか聞いちゃいけないことのように思えてくる。

「ここが、こうなるんだクマ」

「ああ。それで、こうなんだな」

モルテに気づかない二人。

「キリエ、もうすぐだぜ。ヴィト―は」

「え、ああ……うん」

今何を言われてもモルテのほうに注意がいってしまう。

全ての作業が終わったのか、ふう、と息をつきこちらに振り返るアガンの胸倉をつかみ、

「も、モルテ!? ……ちょ、ちょっと待て、落ち着け。状況なら今説明すっから。とにかく落ち着け」

武器を首元にあてていた。

「こっちは疲れてるってのに……」

「いや、わかったから。とにかく武器をおろせ」

「……」

「もう故障しねえから、大丈夫だ。これからまっすぐヴィト―だぜ……モルテ」

「あ。そう。故障ね? 全く……もう夜だって野に……」

ようやく解放されると、

「はあ。食糧とかないし……このまま高速で行くしかねえな……」

「え!? 食糧ないの!? えー、使えなーい!!」

嘆くモルテを、キリエが隣でなだめていた。
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