終焉の鐘

□鐘の音
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ザン、ザン、と規則正しく、波打つ音が聞こえる。

波と波がぶつかり、しぶきをあげ、空の青に溶け込んでゆく。

海の青は、空の青。

「・・・」

広大な空。そして今自分たちがいるのはどこまでも続く、青い海。

男は、甲板からぼんやりと海を見ていた。

その時だ。

ゆらゆらと、頼りなく飛ぶカモメが見えた。

そのカモメは、甲板に降り立ち、そのまま倒れてしまった。

「なんだあ?このカモメは?」

「あれ、なんか巻いてないか?足に・・・」

カモメの足には、紙が巻かれていた。

それをそっとはずして、中を開いた。

「あ・・・」

「おい、書いてあったんだ」

「お前ら、これを世界中に広めてくれ」

「はあ?」

わけのわからない顔をするモグラのような獣人。

「まあ、そのうちわかるさ」
「ところでアガン」
「ん?」
「次ってどこ行くんだ?」

潮風が帆にあたる。

「ヴィト―だ」





世界中。

まずはスフィール平原――

一人のチビクマ族がチラシを見、

城砦都市メクトでは・・・

一人の銀髪のメガネの青年がチラシを見――

夏の大陸、アルビヨンの森で・・・

竜族の末裔がチラシを見――





そしてここはジフニール号の――

調理室。

テーブルいっぱいに並べられた料理の数々を

ネコ師は目をまんまるにしてみた。

「・・・キリエさん」

「あ、ネコ師! どうですか? やっぱり作りすぎでしょうか? でも式の時って、たくさん人も来るからなあ・・・」

「キリエさん、なぜあなたが作っているのですか?」

「へ? なぜって?」

首をかしげるキリエ。

「今日はあなたがたの結婚式のはず。

なぜあなたが作っているのですか?

私たちにも何かやらせてください」

汗を飛ばしながら言うネコ師に、キリエはほほ笑み、

「じゃあ、飾り付けをお願いします。

あとはそれだけなんだ」

「そうですか。ではやらせていただきます」

仕事がもらえて満足げなネコ師。調理室から出ようとし、突然立ち止まる。

「時にキリエさん」

「何?」

「モルテさんはどちらに?」

「モルテ? モルテなら・・・」
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